白雪千夜「足りすぎている」
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185:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:49:45.38 ID:1/ZkFkMM0
 珍しく怒気のこもったお嬢様の声に、驚いて顔を上げた。

「同年代の友達がいなかった私に、北海道の白雪のおじさまとおばさまは、この屋敷へ遊びに来てくれる度に私を可愛がってくれたよ。
 そして、その女の子も。
 お庭に連れ出して、一緒にお花を摘んだり、落ち葉を投げ合ったり、夏は蝶々を捕まえて、冬は雪玉をたくさん作って、鼻の頭を真っ赤にして笑う子が、私は好きだった。
 誰かに照らしてもらわないと輝けない月が私なら、その子は太陽。ルーペンスの天使みたいな、キラキラの笑顔で笑ってくれる子だったの。
 でも」

 お嬢様の顔が、少しずつ歪んでいく。
 こんなにも悲しそうな、お嬢様の表情を見るのは初めてだ。

 私が覚えている――もとい、記憶に残している限りでは。

「悲しい出来事が、その子を変えてしまった。
 太陽は沈み、明けない闇へと落ちていく……それは、私にとって耐えられない。
 だからパパにお願いして、その子を私のそばに引き寄せて、呪いをかけたの。
 誰にも奪われないよう、私のものにして、大切に、大切にしまって……でも」
「おやめください」

 つい声を荒げてしまった。お嬢様の言葉を遮るなど――。
 だが、それ以上の言葉は許容できない。



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