175:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:14:00.18 ID:1/ZkFkMM0
ゆっくり話をする間もなく、お嬢様は「準備があるから」と、私達をリビングに案内した後、そそくさと台所へ引っ込んでしまった。
意味ありげにアーニャさんやアイツと目配せをしていた辺り、この場にいる人達は、おじさまも含め、予め今日のことを了解していたように見える。
皆が申し合わせていたのは、ひょっとして私のことだったのではないか――そのような考えは、果たして飛躍だろうか。
176:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:16:15.42 ID:1/ZkFkMM0
お嬢様は、そこまで私のことを――。
今日、どんな顔をしてお嬢様とこれから話をするべきか気を揉む私を尻目に、コイツは首を振った。
「他社さんと協働で開催するフェスの場合は、ライブバトルと称し、観客の方々からの投票形式によって、その出来を競い合うこともあります。
177:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:19:25.86 ID:1/ZkFkMM0
「それなら良かった」
そうとも知らず、おじさまは椅子の背にもたれ、ふぅと息を吐いた。
「私はてっきり、ちとせと千夜が仕事の関係で喧嘩でもしたのかと心配で」
178:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:24:04.28 ID:1/ZkFkMM0
「アー……それは、ごめんなさい」
「あぁいやいや、謝らなくて大丈夫だよ」
アーニャさんを慰めるように、おじさまが言葉を続ける。
179:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:27:39.21 ID:1/ZkFkMM0
ただ、と言って、おじさまは努めて明るい調子で話を続ける。
「円満離婚、と言えば良いのかな。彼女も経営者なだけあるから、聡明かつ理知的でね。
話し合いはすこぶる建設的に進みました。もちろん、ちとせのために我々ができる最善策についてです。
結果として、親権は私が預かりましたが、彼女に面会の制限は設けていません。いつでも遊びに来てほしいと言ってあります」
180:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:30:25.54 ID:1/ZkFkMM0
そんな私の勝手な心配は余所に、アーニャさんは期待に胸を弾ませるようにウキウキとした声で話をする。
「ロシアでは、よくホームパーティーをします。
パパとママも、アーニャも大好きな人達、たくさん呼んで、みんな楽しいです。
今日も、チトセのホームパーティーに呼んでもらえて、とても嬉しいですね」
181:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:35:25.56 ID:1/ZkFkMM0
着席した私達の目の前に、料理が並ぶ。
と言っても、ワンプレートだけだ。スープも、ご飯やパンすらも無い。
「これだけかい?」
182:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:38:19.90 ID:1/ZkFkMM0
「お嬢様……申し訳ございません」
私は、膝の上に置いた手を握りしめ、俯いた。
183:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:40:37.39 ID:1/ZkFkMM0
「なぜって、決まってるでしょう?」
ガックリとした態度を見せてしまう私を尻目に、お嬢様は愉快そうに胸を張ってみせる。
「これが私の望んだことだもの」
184:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:42:56.70 ID:1/ZkFkMM0
「……解放?」
「黒埼家の従者という呪いからの、ね」
――それはつまり。
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