183:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:40:37.39 ID:1/ZkFkMM0
「なぜって、決まってるでしょう?」
ガックリとした態度を見せてしまう私を尻目に、お嬢様は愉快そうに胸を張ってみせる。
「これが私の望んだことだもの」
真意を推し量りかねる私に、構わずお嬢様は続ける。
「たぶんだけど、千夜ちゃん、アイドルを辞めるつもりだったでしょう」
「えっ!?」
アーニャさんがこれまでに見たことも無いような速さでこちらを振り向くのが、視界の端に見えた。
アイツも、岩のような体が少し動いたように見える。
「……どうしてそれを?」
「なんとなーく、ね。千夜ちゃん、考えることが分かりやすいもの」
私は、誰よりもお嬢様のことを理解している。
そう思っていたが――逆のことは、考えもしなかった。
おじさまの隣からゆっくり歩みを進めながら、お嬢様はまるで詩を詠むようにボンヤリと言葉を繋ぐ。
「今日の誕生日に、私が本当に欲しかったもの……それはね」
その足は、私の席の真向かいで止まった。
「千夜ちゃんの解放」
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