178:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:24:04.28 ID:1/ZkFkMM0
「アー……それは、ごめんなさい」
「あぁいやいや、謝らなくて大丈夫だよ」
アーニャさんを慰めるように、おじさまが言葉を続ける。
「お互い、家が大きすぎたんだろうね。
彼女は大企業の一人娘で次期跡継ぎ。私も、欲しくもない伝統と格式を背負わされた身だった。
黒埼家という、歴史が長いばかりでとっくにカビが生えた家柄を。
だから、結婚をしてもお互い別姓のまま、お互い仕事に追われて暮らしていたのだけど……」
「ちとせさんがお生まれになられてから、状況が変わったと?」
慎重に探るアイツの一言に、おじさまは「そうです」と首肯した。
「あの子にどちらの姓を名乗らせるかで、両家が大喧嘩をしたのです。私と妻を放ってね。
いっそ別姓をやめようという話もあったが、黒埼になれば向こうの会社名も変わるから、納得してもらえるはずがない。逆も同様です。
話はいつまで経っても平行線のまま。だから、私と妻はよく話し合い、離婚をしようという判断に至ったのです」
それは、私も知らなかったことだった。
この家に、おじさまの奥様がいらっしゃらない事は、従者として不可侵の領域であると思い、触れてはこなかった。
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