白雪千夜「足りすぎている」
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188:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:56:51.78 ID:1/ZkFkMM0
「……まずいです」
「やっぱり?」

 案の定ボソボソしている。玉ねぎどころか、つなぎに小麦粉もパン粉も入っていないのではないか。
 ソースも、醤油を水で伸ばしたかのようなシャバシャバとボンヤリした味わいで、中途半端な塩味が見事に口当たりを邪魔している。
 一応食べてはみるものの、大きさや火の通りが不揃いのニンジンも、何故かベチョベチョに煮つめてしまったクレソンも、無い方がまだマシだ。

 私の第一声を聞いて、他の皆が恐る恐るそれを口に運ぶ。

「これは……」
「ンー……」
「……味見はしたのかい? ちとせ」

 皆一様に顔をしかめているのが何だかおかしくて、思わず私は吹き出してしまった。

「ちょっと! 千夜ちゃん笑わないでよ、これでも一生懸命作ったんだから」
「すみません」

 コホンと咳払いをして、私は顔を上げた。

「今度、美味しい作り方をお教えしますよ、“ちとせさん”」

 私のその一言に、彼女は飛びきりの笑顔をパァッと咲かせて「うんっ」と大きく頷いた。


 結局、その日のハンバーグは、それぞれ半分以上ずつ残したプレートをアイツが全て平らげて事なきを得たのだった。



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