129:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:32:13.59 ID:1/ZkFkMM0
「そう、だから」
城ヶ崎美嘉さんが、言葉を継いだ。
「アタシ達も、本当はちとせさんが無茶をするのは、黙って見てられないの。
130:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:34:47.02 ID:1/ZkFkMM0
何が労働環境の改善だ。
確かに常務は「無茶をするな」と言うだろう。
だが、無茶をしなければ到達できないレベルを要求されていたのでは、使われる側のやるべき事は変わらない。
その結果、仮にその者が潰れたとしたら、経営者は「それを命じた覚えは無い」「勝手にやったことだ」と言い逃れる寸法だ。
131:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:42:44.44 ID:1/ZkFkMM0
「チヨちゃん、ギューン☆」
「うひゃあ!?」
急に抱きつかれ、後ろを振り返ると、宮本さんだった。
いつの間に背後に回ったのか、この人は。
132:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:44:50.19 ID:1/ZkFkMM0
宮本さんといい、速水さんといい、強い個性にあてられて目眩をしそうな所にコレだ。
理解できないものへの思考はシャットアウトしたいのに、目の前の彼女はお構いなしに私の視線を釘付けにする。
「取り繕わないハダカの部分に訴えかけて初めて人の心は動かせる。
曝け出そう、解放しちゃおう。内なる本能を認識して初めてあたし達は生を得るんだよ。
133:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:47:56.15 ID:1/ZkFkMM0
「……トレーナーは、チヨのこと、心配していました」
寮の屋上の手すりにもたれながら、アーニャさんはボンヤリと俯いていた。
生憎の天気であり、夜空を見上げても薄曇りを通して月明かりが辛うじて確認できる程度だ。
134:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:50:15.77 ID:1/ZkFkMM0
「そうですか」
「イズヴィニーチェ……ごめんなさい」
「何を謝ることが?」
私はアーニャさんの隣に歩み寄り、手すりに手を置いた。
135:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:55:41.74 ID:1/ZkFkMM0
「……イズヴィニーチェ、チヨ」
アーニャさんは、小さく首を振った。
「それはたぶん、アーニャには、難しいですね」
136:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:57:39.48 ID:1/ZkFkMM0
「で、ですが……!」
無茶なお願いであろうと何とかしてほしい。
いや、しなければならないのだ。
私はアイドルである以前にお嬢様の従者。
137:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:01:33.93 ID:1/ZkFkMM0
――言っている意味がまるで分からない。
この人は、ひょっとして私に喧嘩を売っているのか?
親しくしてくれる人からの決して無視できない一言に、私は身を強張らせた。
138:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:04:25.67 ID:1/ZkFkMM0
「チヨ……アーニャは、日本人です」
?
――え、そこから?
139:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:10:27.66 ID:1/ZkFkMM0
「……確かアーニャさんは、幼少期はロシアで過ごされたと」
「ダー」
彼女が日本語を自在に扱いきれない理由の一つは、それだ。
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