白雪千夜「足りすぎている」
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135:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 14:55:41.74 ID:1/ZkFkMM0
「……イズヴィニーチェ、チヨ」

 アーニャさんは、小さく首を振った。

「それはたぶん、アーニャには、難しいですね」

「なぜですか」
 私はつい声を荒げた。
 心根が優しく、いつも相手を気遣ってくれる彼女からの予想外の返答に、動揺を抑えることができない。

「どうかお願いです。
 お嬢様に関することを誰かにお願いしたい、頼りたいと思うこと自体、私にとっては初めてなのです」


「ンー……理由は二つ、あります」

 アーニャさんはフッと空を見上げた。
 頭の中で、私を説得するための言葉を整理しているのだろうと思った。

「まず、これからのチトセの、レッスンメニューは、特別です。
 961プロの、レオンの曲を歌うの、とても大変ですね。
 アーニャは、一緒に特別なレッスン、受けることができません」

 オーバーランク――つまり、並び立つ者がいない領域のアイドルの曲を借りるのだ。
 アーニャさんの話では、その玲音なる人の特別レッスンを受けることもあるのだという。
 二人は意気投合、というより、玲音さんがお嬢様をいたく気に入ったこともあり、企画自体はスムーズに進んでいるらしい。

 問題は、どこまで完成度を高められるか――つまり、お嬢様の頑張り次第ということだ。



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