101:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:47:48.78 ID:1/ZkFkMM0
彼女が顎で指した方を見ると、アイツとアーニャさんだ。
通路の脇に退いて、電話で何やら話しているアイツを、アーニャさんが不思議そうに見つめている。
ほどなく電話が終わり、その場に合流した私達の下へ、アイツが戻ってきた。
102:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:49:21.31 ID:1/ZkFkMM0
「何か、千夜とプロデューサーのやり取りってさ……ヘンだよね」
「ヘン?」
首を傾げる私に、凛さんは苦笑しながら手を振るう。
103:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:50:53.30 ID:1/ZkFkMM0
観賞が終わり、三人で事務所に立ち寄った。
特に用は無かったのだが、アイツのことが気になると二人が言い出したため、様子を見に行くことになったのだ。
だが、シンデレラプロジェクトの事務室に行くと、そこにアイツはいなかった。
それどころか――。
104:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:55:17.77 ID:1/ZkFkMM0
プロジェクト解体の危機にある、とアイツから聞かされたのは、その日の夕方だった。
346プロの事務所棟の地下。
物置として放置されていた、埃まみれの部屋にメンバーの皆が集められた。
105:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 01:01:11.62 ID:1/ZkFkMM0
政府によって働き方改革なるものが提示され、昨今では某広告会社の社員の過労死がニュースでも取り沙汰された。
労働者の待遇改善と心身のケアは、経営者側にとって喫緊の課題であるという。
特に、業界でも大手の346プロは、その性質上マスメディアに対する露出も多く、揚げ足取りに近いスキャンダラスな追求がいつあってもおかしくはない。
クリーンなイメージを保つためには、ホワイトを演出する必要がある、ということのようだ。
106:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 01:02:52.20 ID:1/ZkFkMM0
気の抜けた、しかし思いも寄らない意見が飛び出した方へ目を向けると、杏さんだった。
「え、あ……杏ちゃん、何言ってるのぉ?」
「要するにその常務って人は、杏達の活動の仕方に文句を言ってるだけで、アイドルとしての活動そのものを止めろって言ってるんじゃないんでしょ?」
107:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 01:05:08.36 ID:1/ZkFkMM0
――杏さんの言い分は、理にかなっている。
というより、反論する必要が無いもののように思われた。
少なくとも、私の当初の目的は、お嬢様に言われたとおり、アイドルをこなすこと。
たまたま配属された先が、このシンデレラプロジェクトであっただけで、これにこだわる理由は無い。
108:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 01:08:23.29 ID:1/ZkFkMM0
「……まだ解体されるべきものではないと考えます」
一斉に、皆が安堵のため息を漏らす。
へぇ、という杏さんの値踏みをするような声も、その中に混じって聞こえた。
109:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 01:10:19.71 ID:1/ZkFkMM0
「やったぁーー!!」
物置部屋が歓声に包まれる。
まだプロジェクト存続が決まったわけでもないので、ぬか喜びになり得る可能性は否定できない。
110:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 01:12:37.76 ID:1/ZkFkMM0
当面の活動拠点として、この物置部屋を使っていくことになった。
プロジェクト存続に向けて動き出した私達の最初の仕事は、部屋の掃除だ。
「千夜ちゃん、普段やってくれてばかりだから、今回は休んでくれてもいいわよ」
「ありがとうございます。掃除は、少々苦手なもので」
111:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 01:15:00.14 ID:1/ZkFkMM0
アイツは、急に苦しそうな表情で押し黙った。
先ほどまで明るくなってきていた部屋の空気までもが、急激に陰鬱になっていく。
しばらくして、アイツは自分のバッグから書類を一枚取り出し、凛さんに手渡した。
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