8:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:01:13.66 ID:3RPf7FsGO
「あらぁ、別嬪さんを連れて帰って」
自宅について母親を玄関に呼ぶと、母は目を丸くして驚いた。女性から見ても、瑞穂はやはり美人に見えるらしい。
初めての来客に、母は慌ただしく対応をする。二階の角の俺の隣の部屋を使ってくれ、トイレはどこ、風呂はどこ、食事は何時と説明し、瑞穂は一々それに頷いて返す。夕食がまだだった彼女のために、簡単な食事を作るらしい。それまでに風呂を済ませてくれと、瑞穂の荷物を客間に運ぶと、そのまま俺は自室に戻った。
9:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:03:15.01 ID:3RPf7FsGO
瑞穂を待つ間、一人で居間にいるのも何だか寂しくて、国営放送だけが映るテレビの電源を入れた。小難しいニュースが流れ始める。意味はあまり分からないが、とりあえずそのままにしてぼーっとしていると、居間の襖が開いた。
「良いお湯でした……凄い、ご馳走だ」
風呂からあがった瑞穂が、ラフな服装で入って来た。テーブルの上に並ぶものに目を丸くして驚いていると、母さんが台所から顔を出して「召し上がれ」と声をかけた。「ありがとうございます、いただきます」と礼儀正しく返し、座布団に座って手を合わせた。
10:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:04:24.62 ID:3RPf7FsGO
「ご馳走様でした、美味しかったです。残しちゃってすみません」
「お粗末さまでした。張り切って出し過ぎちゃったね、ごめんなさいね」
母さんが食器を下げ始めて、俺もそれに倣う。立ちあがろうとした瑞穂には「お客さんがそんなことしないの」と窘めていた。
11:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:05:31.77 ID:3RPf7FsGO
「カズくんは、明日の予定は? 夏休みなんだよね?」
「今日の幽霊探しの報告を、明日当番のやつのところにしに行くけど。それだけかな」
「一緒に行っても良いかな? 暇があるなら、ついでに島の案内もしてほしいんだけど」
12:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:06:50.56 ID:3RPf7FsGO
「カズくん、朝だよ、朝ごはんだよ」
聞きなれない声が扉の方からして、目が覚めた。寝ぼけ眼でそちらを向くと、もうしっかりと外行きの格好をした瑞穂がそこに立っていた。
瞬間、昨日の夜の出来事を思い出して、ハッと目が覚めた。
13:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:07:59.49 ID:3RPf7FsGO
お寝坊さんだねと笑う彼女は、昨日の夜とはまた印象が変わった。月明かり、風呂上がりという状況とは違い、メイクをバッチリした彼女を明るい場所で見るのは初めてだったが、それはもう、言葉にできないような美人だった。
垢ぬけて感じるのは、島にいないようなサラサラで長い茶髪のせいだけではない。目鼻立ちはくっきりしていて、顔の大きさはりんごくらいのようにも見える。スラッと伸びた手足に、凪で折れてしまうんじゃないかと言うような華奢な体。
容姿端麗、眉目秀麗、美人薄命……最後は違うか。とにかく、容姿をほめたたえる言葉は彼女のためにあるというような美しさだった。
14:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:09:23.99 ID:3RPf7FsGO
「今日は何時くらいから出かける?」
「んー、昼ごはんが家にあるし……昼食べてからにしようか。島を回るだけなら、たぶんそれくらいでちょうど良いし」
「ん、了解。それまでは何するの?」
15:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:10:51.74 ID:3RPf7FsGO
そんな彼女に気を取られていたせいか、予定していたページの7割程度しか進むことは無かった。決してこれは言い訳ではない。仕方ないことだ。緊張するって、そりゃ。
宿題を片付けて、昨晩の残り物で昼ごはんを済ませると、いよいよ出発することになった。出る間際になってちょっと待ってと言われ、何事かと思うと、これでもかと言うほど隈なく日焼け止めを塗り始めた。そして、島では滅多に見ることの無い日傘を構えた。
とは言え、それで暑さを凌げるわけではない。
16:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:11:48.12 ID:3RPf7FsGO
二階からばたばた音がして、階段を下りてきた水原は学校とは少し様子が違った。校則違反のメイクを軽くして、服もどこかにお出かけするかのような小奇麗なワンピース姿だった。
「昨日は幽霊出なかったぞ」
「そ、そっか。ところで、えーっと、後ろの人は?」
17:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:13:20.97 ID:3RPf7FsGO
島を一周する頃には、瑞穂も水沢もすっかり仲良しになっていた。恐るべし、女子のコミュ力。
どうやら、明日は水沢がうちに遊びに来る約束までしてしまったらしい。帰り際に、明日は寝坊しないようにねと注意されてしまった。
「仲良くなるの早くない?」
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