96: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:31:17.62 ID:9pdDfgPfo
──────
夕方、ロンドンにいる伊織から着信があった。
97: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:32:05.18 ID:9pdDfgPfo
*
数日後、劇場にようやく姿を現した伊織とエミリーの二人を、控え室でまだかまだかと待ち構えていたアイドルたちはそれはもう盛大に迎えた。
98: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:32:53.41 ID:9pdDfgPfo
「お帰り、エミリー」
「はい。 私も、何が何だかまだよく分かっていないのですが……仕掛け人さまにも、ご心配をおかけしてしまったようで……本当にすみません」
エミリーはペコリと頭を下げる。
99: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:35:12.99 ID:9pdDfgPfo
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エミリー・スチュアート復帰公演の告知を行ってから、その日のチケットが通常の何倍もの早さで売り切れたことはただの偶然ではないだろう。
誰もが彼女の帰りを待っていたという確かな証だ。
100: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:36:16.34 ID:9pdDfgPfo
観客席のほとんどはエミリーのシンボルカラーであるバイオレットのサイリウム一色で埋め尽くされ、
そこにエメラルドグリーンの光がちらほら混ざっている。
圧巻の光景だった。
101: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:37:40.76 ID:9pdDfgPfo
その後も数曲ずつ空けてエミリーの出演するステージは大盛り上がりを見せた。
“Princess be Ambitious!!”ときて“Eternal Harmony”、最後にはソロの“はなしらべ”。
どれも割れんばかりの歓声に包まれ、曲が終わればメンバーはエミリーに駆け寄り彼女の復活を祝った。
102: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:38:56.42 ID:9pdDfgPfo
「エミリーはしっかりやってる?」
ずっと彼女の様子を眺めていると、後ろから声をかけられた。伊織だった。
前髪を全てたくし上げ、リボンつきのカチューシャで留めている。
103: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:41:47.91 ID:9pdDfgPfo
今のエミリーは、日本語が分からなくなっていたことも、昔の記憶を失っていたことも、何も知らない。
社長とも相談して、その事実は一切彼女に知らせないことにした。
何もなかったことにする──他のアイドルたちに徹底させたのはこのことだ。
104: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:42:40.99 ID:9pdDfgPfo
「──そうそう」
もう心配はなさそうね、と控え室に戻ろうとした伊織を引き止める。
105: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:44:35.10 ID:9pdDfgPfo
『休養中、私はたくさんの方々に支えて頂きました。 事務所で共に活動しているみなさん、仕掛け人さま、そしてごヒイキの皆さま、大勢です』
正座の姿勢を伊織に向けて、エミリーはじっと伊織を見つめた。
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