102: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:38:56.42 ID:9pdDfgPfo
「エミリーはしっかりやってる?」
ずっと彼女の様子を眺めていると、後ろから声をかけられた。伊織だった。
前髪を全てたくし上げ、リボンつきのカチューシャで留めている。
その見た目が、この事務所で初めて伊織に出会ったころを思い出させた。
「よっ。 その髪型懐かしいな」
「何よ。 伸びたらまた戻すわよ……」
伊織は恥ずかしそうに一瞬こちらを睨みつけ、視線を逸らした。しばらく二人でエミリーを眺める。
「──全然知らなかったよ、二人のこと」
少し間を置いて、伊織のほうを見ずにそっと話しかけた。
「何で話してくれなかったんだ?」
「わざわざ言うようなことじゃないからよ」
「伊織はいつから気づいてたんだよ」
「エミリーとこっちで初めて会ったときからね」
伊織もこちらを見ずに続ける。
「ただ、エミリーのほうはずっと気づいてなかったみたいだし。 わざわざ打ち明けて、恩着せがましいことはしたくなかっただけ」
「でも、バラしたんだろ? だったら──」
「エミリーは知らないままよ」
「そうなのか?」
尋ねたと同時に、そうだったと思い出す。
「だってあの子、今度は頭を打ってから元に戻るまでの間の記憶が全くないんだもの」
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