22: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:45:50.57 ID:9pdDfgPfo
日常会話の学習についてはどうか、という質問には、
「それは、彼女がどのようにして日本語を勉強してきたかによりますから、何とも」
23: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:47:11.68 ID:9pdDfgPfo
劇場に戻る前にもう一度事務所へ立ち寄らねば。昨日伊織と話した件で、高木社長にお願いしたいことがあるのだ。
エミリーにはとりあえず今週いっぱい休みを与えて自宅待機とさせ、
以降の出勤については日本で一緒に暮らしている彼女の父親と電話で連絡を取り合うこととなっている。
24: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:49:34.03 ID:9pdDfgPfo
*
ちょうど週の明けた数日後、765プロの事務所宛に巨大な段ボール箱が届いた。
男の俺ですら一人で抱えきれるか分からない。まさかこんなサイズで届くとは。
25: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:50:55.46 ID:9pdDfgPfo
「Wow...!」
何冊、否何十冊とも数えられる大小さまざまな本。
背表紙付きの分厚いハードカバー本──タイトルに“English‐Japanese Dictionary”と読める──や、
26: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:52:54.66 ID:9pdDfgPfo
「そうだよ。 これなら、頑張って日本語を勉強していた昔の思い出とリンクして、言葉そのものも思い出しやすくなるんじゃないかと思ってな」
「?」
「つまりだな……エミリー。 俺たちと一緒に、もう一度、日本語の勉強をしてみないかってことなんだ」
27: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:54:56.34 ID:9pdDfgPfo
軽い話し合いだけ済ませた結果、明日からエミリーはしばらく劇場ではなくこちらの事務所のほうに通って、
時間を決めてこの教材たちを使って“復習”していくことになった。
伊織も通常の仕事の合間を縫って、できるだけこちらに顔を出してエミリーに付き合う気マンマンといったところだ。
28: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:56:04.02 ID:9pdDfgPfo
「もともとお父様は、エミリーを一旦故郷へ帰すつもりだったらしいので。 エミリー本人にはまだ伝えてないようですが」
「……そうなんですか」
「まあ、それも仕方のないことです。 きっと誰よりもエミリーのことを心配しているでしょうし、
向こうに住んでる他のご家族もこのことを知ればそりゃ帰って来てもらいたいに決まってます」
29: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:58:14.27 ID:9pdDfgPfo
──────
以前一度だけ、エミリーに尋ねてみたことがある。
30: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 21:00:54.74 ID:9pdDfgPfo
「伊織さまは、私に本当に良くして下さっています。
時には厳しいご指導もありますが、それもとてもありがたいんです。
きっと、日本という異国で努力を続けるためにはもっとたくましくいるように、というお心の顕れなのだと信じています」
「そうか。 伊織のこと尊敬してるんだな」
31: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 21:03:47.33 ID:9pdDfgPfo
*
いつの間にか傾いた日差しがデスクを黄色く照らしていた。
32: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 21:05:59.37 ID:9pdDfgPfo
「どうかしたのか?」
「……何でもない」
「ならいいけど。 それにしてもエミリー、なんだか嬉しそうだな」
「?」
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