エミリーが忘れた日
1- 20
23: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:47:11.68 ID:9pdDfgPfo
 
劇場に戻る前にもう一度事務所へ立ち寄らねば。昨日伊織と話した件で、高木社長にお願いしたいことがあるのだ。

エミリーにはとりあえず今週いっぱい休みを与えて自宅待機とさせ、
以降の出勤については日本で一緒に暮らしている彼女の父親と電話で連絡を取り合うこととなっている。
一旦ゆっくり休んでほしいと伝えはしたが、本当の所は少々時間稼ぎをしたかった。

あれから一晩考え、そして先生の話も総合すると、やはり伊織の案が一番いいのかもしれない。
何もせずにただエミリーが覚えていたはずの言葉の壁に戸惑い焦り悲しむところを見るのは正直言って辛い。
何かしてやれることがあるとすれば、元に戻る手助けをするべきだ。思い出す手助けを。

あのエミリーに──下手をすれば自分よりも漢字に強かったあのエミリーに、
日本語を教えてやるなどと言ってしまうのはいささか針につつかれる気分だが、
これ以上伊織にばかり頼ってもいられないし、ここは大人として、またネイティブとして、一肌脱ごうと決意を固めた。

そろそろ午前の営業が終わった頃合だな、と携帯を取り出す。

「もしもし、伊織か? お疲れ様──」

何かを勉強するときには必要なもの。そのアテを探っていたときになんとなく思いついたことがある。
運がよければ、きっとエミリーにとって大いに助けになるものがまだ残っているかも知れない。

「昨日のことで、一つ提案があるんだ」


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
126Res/148.14 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice