27: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:54:56.34 ID:9pdDfgPfo
軽い話し合いだけ済ませた結果、明日からエミリーはしばらく劇場ではなくこちらの事務所のほうに通って、
時間を決めてこの教材たちを使って“復習”していくことになった。
伊織も通常の仕事の合間を縫って、できるだけこちらに顔を出してエミリーに付き合う気マンマンといったところだ。
「プロデューサーさん、本当に準備がいいですね。 エミリーちゃんのために……」
届いた本たちを一緒に眺めながらしばし楽しげに会話を続けている二人を見ていると、横から音無さんが声をかけてきた。
「いやいや、そんなことは」
「いえ、流石だと思います。 それに、伊織ちゃんも……
エミリーちゃんだけじゃなく、他のアイドルの子達ともお話をして、できるだけ皆が変に心配しないようにすっごく気を遣ってるって」
「それは……自分でも少し驚きです。 確かに伊織っていざとなればそういう優しいところがよく出てくるんですけど」
何となくそういう単純な思いやりとは別の、エミリーへの特別な思いがあるのかもしれない。
伊織は家のこともあって外国人との交流も多そうだし、こうやって日本にやってきて頑張っているのを人よりも応援したくなる、とか。
──ちょっと“ガラ”じゃないな、と思ってしまったのを、少しだけ反省する。
「ところでエミリーちゃんのお父様は、何て仰ってたんですか?」
「──今回のことを提案したときは、ちょっと複雑そうでした」
音無さんの質問に、一気に現実へ引き戻される。
そう、この一件には常に新たな問題が付いて回ってきているのだ。
エミリーが本当に元に戻るか否か、とはまた別の問題が。
俺は社長と共にエミリーの父親と話し合いをしたときのことを音無さんに簡潔に伝えていった。
我々が彼女に日本語を教え直します、などという提案にあまりいい顔はされなかったことから順番に。
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