28: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:56:04.02 ID:9pdDfgPfo
「もともとお父様は、エミリーを一旦故郷へ帰すつもりだったらしいので。 エミリー本人にはまだ伝えてないようですが」
「……そうなんですか」
「まあ、それも仕方のないことです。 きっと誰よりもエミリーのことを心配しているでしょうし、
向こうに住んでる他のご家族もこのことを知ればそりゃ帰って来てもらいたいに決まってます」
あくまで、日本に残ってアイドルを続けてほしいというのはプロダクション側の利己的な要求に他ならない。
エミリー自身の意思はともかく、ご家族にとってはそうとしか映らない。当然のことだ。
「だから社長と一緒に説得して、なんとか期限付きで了承してもらいました」
「期限?」
「そのときまでにエミリーの状態が元に戻らなければ、彼女には一度帰国して本格的に活動を休止してもらうことになりました。
ただ……そうなれば、復帰はまず絶望的かと」
「そんな……」
「絶対に、絶対に何とかしてみせます」
自分自身へ言い聞かせるようにそれだけ返事をした。
「ちなみに、期限ってどのくらいなんですか?」
「それが──」
最後の問いに、ゆっくりと深くため息をついてから答えた。
それっきり音無さんは何も言わず、ただ真横で同じように伊織とエミリーの仲睦まじい光景を眺めているだけだった。
俺もそれ以上話を続ける気になれなかったので、そのまま考えるのを止め、黙って二人を見ていた。
二週間──あまりにも短いこの期間で何も出来なければ、エミリーはイギリスへ帰ってしまう。
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