26: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:52:54.66 ID:9pdDfgPfo
「そうだよ。 これなら、頑張って日本語を勉強していた昔の思い出とリンクして、言葉そのものも思い出しやすくなるんじゃないかと思ってな」
「?」
「つまりだな……エミリー。 俺たちと一緒に、もう一度、日本語の勉強をしてみないかってことなんだ」
伊織が俺の言ったことを伝えると、ほんの少しだけエミリーの表情が曇ったように映った。
「エミリー……大変なのは十分分かってるつもりだし、やってみてお前がキツいと思ったり辛かったりするなら強制はしない。
ただ、『辞めたくない』って言ってくれたよな。 だから、俺はお前がもう一度ステージに立てるようにしなきゃならない。
元に……いつものエミリーに戻ってほしいんだ」
「…………」
「医者の先生も言っていたけど、エミリーは日本語が分からなくなったわけじゃない。
思い出せないだけなんだ。 これは思い出すためのきっかけを作るためにやるんだ」
エミリーは申し訳なさそうに眉をひそめ、目を閉じて首を横に一回振った。
「《……私、こうなってからずっと皆さんに迷惑をかけてばかりで……》」
「《迷惑だなんて思わないで》」
伊織がぴしゃりと返す。
「《私たち皆エミリーが元に戻るのを待ってるし、そのために何だってするわよ。
一番辛いのはアンタなのよ、そのことを負担に感じる必要なんてないもの》」
「but...」
「《きっと765プロの他の誰かがこうやって大変な目に遭えば、アンタも同じように力を貸すでしょう?》」
「…………」
「《だからエミリーは自分の気持ちだけ考えればいいの。 わかった?》」
「《……ありがとうございます》」
エミリーはいっそう下を向いて絞り出すようにそう言ってから、今度はゆっくり顔を上げて伊織を見つめた。
「《私も、また皆さんと以前のようにお話がしたいです。
またステージに立ちたいです……頑張って、思い出したい……です》」
伊織は嬉しそうにエミリーの肩をポンと叩いてにひひ、と笑ってみせた。
「ほら、そうこなくちゃ」
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