エミリーが忘れた日
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25: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 20:50:55.46 ID:9pdDfgPfo
 
「Wow...!」

何冊、否何十冊とも数えられる大小さまざまな本。
背表紙付きの分厚いハードカバー本──タイトルに“English‐Japanese Dictionary”と読める──や、
文法の解説書、イラスト付きの単語帳、会話集、そして数十冊の大部分は手書きのノートだった。

どれもこれもページの端がボロと擦り切れていたり、インクの汚れが広がっていたりと相当古びて見えるが、
保存状態が悪かったからではなく、おそらく相当使い込んでいたのであろう。
その全てに、おびただしいと言って差し支えない量の付箋が上から横から所狭しと貼り付けられている。
その付箋一つ一つにも、メモらしき小さな英文字の羅列がびっしりと埋め込まれていた。

「つまり……これって」

音無さんは目を丸くして箱の中身を覗いていた。

「エミリーが向こうで使っていた、日本語の教材だそうです。 あるものを全部送ってきてもらいました」
「こんなにたくさんですか……!?」
「……俺もさすがにびっくりです」

エミリーは思いがけず旧友に出くわしたときのような驚きと歓喜に似たそれを、一冊一冊取り出すたびに表情へ滲ませていく。
しばらくそうやって過ごしているのを眺めていると、ふと我に帰ったように尋ねてきた。

「《どうしてこれが……?》」
「《プロデューサーの提案なの》」

伊織が目配せをしてくる。


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