エミリーが忘れた日
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32: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 21:05:59.37 ID:9pdDfgPfo
 
「どうかしたのか?」
「……何でもない」
「ならいいけど。 それにしてもエミリー、なんだか嬉しそうだな」
「?」

それをさして気にせず、今度は向こう側に声をかけた。エミリーは俺の姿を一瞬目に留め、続く言葉を待つように伊織をちらりと見る。

「《あんたがあんまり楽しそうにしてるから、不思議みたいよ。 プロデューサーは》」
「Hmm... How should I say?」

話を理解したエミリーは軽くはにかんで、黄ばんだ「ひらがな教材」を持ち上げ、懐かしむように表紙を眺めた。

「《自分でも何となく分かるんです。 小さいころこうやってずっと勉強していたなって》」
「へぇ……」
「《それに、いくらかなら日本語、思い出せそうな気がします》」
「そうなのか?」
「...ワタシノ、ナマエハ Emily Stewart...デス」

思わず小さく拍手をすると、エミリーは照れくさそうに頭を掻きながら控えめに笑う。
伊織も珍しく素直ににこやかな表情でエミリーを誉めてみせた。

それにしても、いつ見たってロンドンから届いたこの教材の山には圧倒される。
立ち上がって中を覗いてみると、いっぱいに詰め込まれた本の数々は一冊引き出すのも苦労しそうなほどだ。


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