エミリーが忘れた日
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33: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 21:08:52.21 ID:9pdDfgPfo
 
そして本の詰まった箱はそれ以外にもうひとつ──こちらはエミリーの父親から直接預かったものだ。

「エミリー、こっちのダンボールの中身見てもいいか?」
「……あんまりジロジロ見るものでもないんじゃない? プライベートなアイテムでしょ」
「んー、そうか……」

伊織にそう言われ、少しためらう。
俺としてはこれだけの努力の証を積み重ねてきたエミリーへの素直な賞賛として、
あるいは彼女がどうやって純日本人顔負けの言語力を身につけたのか、単純な好奇心の表れでしかないのだが。

ただ、エミリー本人からは「《少し恥ずかしいですが、大丈夫ですよ》」と許可をもらったので、ほんの少しだけ見させてもらうことにした。
そのまま彼女はノートをめくり、新たなページをシャープペンシルで次々と埋めていく。

こちらは日本に来るときにエミリーが一緒に持ってきたものとのことで、
より難しそうな語学の参考書が数冊と、日本語に訳された小説(中身を読み流してみると【シャーロック・ホームズ】だった)など……
ごくごく最近まで、あるいは今も、エミリーが愛読しているものなのだろうか。

そうやっていろいろ探しているうち、ふとその片隅に小さな筒が差し込まれているのを見つけた。
美術の授業で使うような、絵をしまうための筒だ。

「これは……?」

蓋をスポンと開き、中に入っていた厚手の画用紙を取り出してみる。


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