99:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:53:52.43 ID:YWfCY9A20
りみとたえが今生の別れの寸劇をして、有咲がもはや無反応でそれをスルーして、それを傍目に相変わらずうんうん唸りながら自分の席へ腰かけた朝のひと時。
ホームルームで気の抜けた先生の挨拶を聞いて、一時間目の英語の授業を受けたひと時。
100:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:54:33.09 ID:YWfCY9A20
「何よ、恋のスタンプカードって?」
三時間目が終わると、隣の席の有咲が香澄の傍らに立って、相変わらずか細く揺れる声をかける。返事に困って、曖昧な照れ笑いを浮かべた。
101:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:55:18.68 ID:YWfCY9A20
「……かすみん」
「…………」
102:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:56:00.64 ID:YWfCY9A20
「あ、有咲ちゃん……?」
当惑した香澄に、指は眉間につけたまま、有咲は言う。
103:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:56:35.99 ID:YWfCY9A20
「やっぱりボケナスよ。今のかすみんも、違う世界に行った沙綾も」
しゅんと落ち込んだ香澄に、内容とは裏腹な柔らかい声を出して、有咲は指を眉間から離す。それから香澄に顔を寄せて、大きな瞳をしっかり覗き込んで、言葉を続ける。
104:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:57:14.78 ID:YWfCY9A20
「前はほら、ひとりで考えなさいって言ったけど……今回は違うでしょ? もうかすみんはしっかりと歌に向き合ってるし……ひとりじゃない。沙綾だってそう。あたしと、りみと、おたえがいるんだから」
「有咲ちゃん……」
105:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:57:53.16 ID:YWfCY9A20
それから改めて考える。一番に頭に浮かんだのは、前に有咲に突き放されて沙綾の部屋で歌詞を考えた時のこと。
あの時は自分のはじまりの歌だった。じゃあ今度の歌は、どんな歌なんだろうか。
106:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:58:32.54 ID:YWfCY9A20
『なにかを乗り越えたと思っても、実際、乗り越えたのだとしても、またつまづくことはある。うまくいったり、いかなかったり……。つらいことも起こるし、思いがけないことも起こる……。人生は魔法じゃないから』
その時の香澄は、引き込まれるように沙綾を見つめていた。
107:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:59:00.64 ID:YWfCY9A20
「……みんな、ありがとう」
自分を取り囲む大切な友達を順々に見やって、香澄はお礼を言う。眉間の皺はとっくになくなって、瞳には先ほどまでにない光が宿っていた。
108:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:59:30.72 ID:YWfCY9A20
書きたいこと、伝えたいこと。それが決まると、香澄はどんどん歌詞を編んでいく。
その内容は、沙綾がサアヤと入れ替わる前日、有咲の蔵で他愛のない“たられば”の話をした時にちょこっと歌った歌と通じるものがあった。だから、もともと大まかに出来ていたメロディーや歌詞に、今の気持ちを詰め込んでいった。
109:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:00:15.00 ID:YWfCY9A20
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