79:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:36:01.28 ID:YWfCY9A20
もしも私が同じ立場になってそう思ったら、眩しさと温かさ、それと大きな罪悪感に板挟みになってしまうだろう。多分だけど、入れ替わった沙綾も、程度の大小はあれどそう思ってしまって苦しんでいるんだ。
これはまったくの憶測でしかないけれど、私も彼女も山吹沙綾だ。だから、きっと同じなんだ。
80:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:37:40.54 ID:YWfCY9A20
6
沙綾の頭の中は、日を追うごとにどろどろとした重たいものに侵食されていた。
81:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:38:19.38 ID:YWfCY9A20
学校では顔をしかめて俯くことが多くなった沙綾。そんな彼女の姿を見て、Poppin'Partyのみんなはいつも心配する声をかけた。
「大丈夫、サーヤ?」
82:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:38:46.26 ID:YWfCY9A20
「サーヤ……」
その背中を、カスミはいつも歯痒い思いで見送っていた。どうしたら沙綾は元気を出してくれるのか……考えても分からないから、とにかくたくさん声をかけようと思っていたけど、そうする度に彼女は無理な笑顔を浮かべる。
83:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:39:52.85 ID:YWfCY9A20
やまぶきベーカリーの仕事は、パンを陳列して、レジに立ってお客さんの相手をして……と、ヤマブキパンでのものと変わりなかった。むしろ、パンはほとんど父親が焼くし、小さな弟と妹も手伝ってくれるから、あちらにいた時よりもやることは少ない。
ただ、沙綾にとって問題があるのは常連客の相手だった。
84:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:40:39.15 ID:YWfCY9A20
「無理しちゃダメだよ〜。あたしみたいに授業中も眠るくらいじゃないとー」
「……そう、だね」
85:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:41:19.49 ID:YWfCY9A20
「おねがいしま〜す」
「はい、承ります」
86:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:42:12.01 ID:YWfCY9A20
ここで働いている間なら、入れ替わったこととか、心配してくれるみんなのこととか、そういうことを頭の隅に放って置けたのに。身体を動かしているだけで、何も考えずにいられたのに。なのに、また私は心配されて、こうも打ちのめされる。自分の影が大きくなって、どんどんその暗闇に飲み込まれていく。ああ、なんて嫌な人間なんだろう、私は。
頭の中にどうしようもなく重たいものが渦巻く。それが大きな声で喚き散らして暴れまわるから、頭痛と眩暈がしてきた。胸の中にはどろりとした、嫌な熱を持つ塊が引っ付いて離れない。身体中が熱いのに、寒気がしてやけに喉が渇く。
87:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:43:42.26 ID:YWfCY9A20
気が付くと、沙綾は自室のベッドで横になっていた。薄ぼんやりとした視界に茜色の陽光が見えて、それから傍らに視界を移すと、ベッドサイドに椅子を持ってきて、そこに腰かける母親がいた。
「38.5℃だって。完全に風邪引いてるわね」
88:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:44:35.52 ID:YWfCY9A20
「そう、よかった。もう、倒れるまで黙ってるなんて……誰に似たのかしらね」
「……たぶん、おかあさん」
89:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:45:12.66 ID:YWfCY9A20
「明日はお休みね。学校には私から連絡しておくから」
「うん……」
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