86:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:42:12.01 ID:YWfCY9A20
ここで働いている間なら、入れ替わったこととか、心配してくれるみんなのこととか、そういうことを頭の隅に放って置けたのに。身体を動かしているだけで、何も考えずにいられたのに。なのに、また私は心配されて、こうも打ちのめされる。自分の影が大きくなって、どんどんその暗闇に飲み込まれていく。ああ、なんて嫌な人間なんだろう、私は。
頭の中にどうしようもなく重たいものが渦巻く。それが大きな声で喚き散らして暴れまわるから、頭痛と眩暈がしてきた。胸の中にはどろりとした、嫌な熱を持つ塊が引っ付いて離れない。身体中が熱いのに、寒気がしてやけに喉が渇く。
耐え切れなくなったから、目頭に右手を当てて、レジカウンターに左手をついてうなだれた。
耳鳴りがする。頭の中をガンガンと叩かれる。胸の内を焼き尽くすような熱が這いまわる。
「おねえちゃんっ!?」
少し舌ったらずな声が聞こえて、沙綾は顔だけをそちらに動かす。明滅を繰り返す視界には、驚いたような顔をして、それから慌てて駆け寄ってくる女の子の顔。
「だ、大丈夫!?」
「だい……じょう、ぶ」
紗南ちゃん、だっけな……と他人事のように曖昧な思考を浮かべながら、うわ言のように返事をする。それを聞いて、紗南はくしゃりと泣きそうな顔になった。
「お、おかあさーんっ!」
バタバタバタ……慌ただしい足音が遠ざかっていく。それが目の奥に響いて、沙綾は瞳を閉じた。
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