160:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:38:12.67 ID:YWfCY9A20
瞳を閉じる。このおかしな、ジョーシキじゃありえない日々を脳裏に呼び起こす。
暗い校舎、さびしい教室。
161:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:39:19.25 ID:YWfCY9A20
瞳を開く。眼前には、少しだけ見慣れた山吹沙綾がいた。
「……初めまして、かな」
162:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:39:45.16 ID:YWfCY9A20
――電車の進行方向。ずっと続く線路の先には、大きな二重の虹がかかっているんだから。
163:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:40:51.08 ID:YWfCY9A20
エピローグ:さあや
スマートフォンの目覚ましの音がした。
164:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:41:21.31 ID:YWfCY9A20
もしかしてずっと夢を見ていたんじゃないか、なんて不安になったから、沙綾はスマートフォンのディスプレイを覗き込む。そこに表示された日付は十一月十四日の水曜日。
入れ替わった自覚があったのが九月の終わりだし、星を見ようと約束したのは十一月十三日だった。
165:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:42:03.69 ID:YWfCY9A20
久しぶりに袖を通したワンピースの制服には懐かしさと新鮮さが同居していて不思議な感じがした。髪の毛も懐かしさを感じるシュシュでポニーテールにくくって、沙綾は台所まで足を向けた。
「…………」
166:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:42:40.91 ID:YWfCY9A20
「どうしたの?」
「呼び方がまた戻ったなって思って」
167:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:43:43.53 ID:YWfCY9A20
この奇妙な感覚はなんて言葉にすればいいんだろうな。そんな思いを抱えながら、沙綾は久方ぶりの見慣れた通学路を歩いていた。
目に付く街並みは生まれてからずっと一緒に過ごしてきたもの。それに比べれば、この街を離れたひと月半なんていう期間はとても短いものだ。だけど目に映る全部が懐かしくて、秋と冬の境目の肌寒い風が心地よくて、世界が愛しくて優しくて、泣いちゃいそうなほど眩しい。
168:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:44:25.57 ID:YWfCY9A20
「おはよう」
「……うん。おはよう、りみりん」
169:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:45:01.04 ID:YWfCY9A20
入れ替わっている間にもずっと学校には行っていた。だというのに、沙綾は夏休み明けのような気持ちで教室の敷居をまたいで、自分の席に座っていた。
窓からの陽射しが明るい、空席がある方が珍しい教室。その中に自分もいることがまだ夢を見ているみたいで、全然実感が湧かない。
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