161:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:39:19.25 ID:YWfCY9A20
瞳を開く。眼前には、少しだけ見慣れた山吹沙綾がいた。
「……初めまして、かな」
「うん……そうだね」
いつの間にか窓から射す白い光はなくなっていた。お互いの背中の窓には、自分にとって大切で、だけどもうひとりの自分にとってはもっともっと大切な、それぞれの花咲川の街並みが流れている。
「やっと出会えた……けど」
「もうお別れ、だね」
透明な壁越しに、さあやとサアヤは手を合わせ続けている。本当の意味でもうひとつの世界の自分と出会えたけど、もうすぐにこの夢は覚めるだろう予感がしていた。それがちょっとだけ寂しいけど、でも、それでいいんだと思う。
だって――
「ねえ、見て」
「……綺麗だね」
さあやが電車の進行方向へ視線を動かす。それにならって、サアヤも顔を巡らせて、小さくこぼした。
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