166:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:42:40.91 ID:YWfCY9A20
「どうしたの?」
「呼び方がまた戻ったなって思って」
「え?」
「ここ最近はずっと『お母さん』って呼んでくれたじゃない? まだ沙綾が小さかったころを思い出して、ちょっと懐かしかったし……なんだか嬉しかったから」
「あー……」
言われて、昨日の夢を思い出す。そういえば、もうひとりの私は両親のことをお父さん、お母さんって呼んでたな……。
「……そっちの呼び方の方がいい?」
「どっちでも。沙綾の好きな方でいいわよ」
「ん、分かったよ、母さん。……あ」
と、そこで突拍子のないことを思い立って、口から漏れた呟き。
「どうかしたの?」
それを耳ざとく拾った母から尋ねられて、沙綾は「あー」とか「うー」とか少し唸ってしまう。今ふと思ってしまったことを口にするべきか、否か。
「……えっと、大したことじゃないんだけどさ……」散々迷ってから、沙綾は口を開く。「なんだか今日の晩ご飯、ペペロンチーノが食べたいなぁって思って」
「ふふ、分かったわ」
「ん、ありがと」
胸中には、夢の中でお互いに抱いた『もっと素直になるべきだ』という思いがあった。だからこそ素直にお願いを口にした……のはいいけど、なんだかすごく照れくさい。
「純と紗南、起こしてくるね」
だから沙綾は取り繕うように言葉を続けて、愛しい弟と妹を起こしに行くのだった。
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