163:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:40:51.08 ID:YWfCY9A20
エピローグ:さあや
スマートフォンの目覚ましの音がした。
ジリジリジリジリ! なんて、いい加減もう起きなさいと枕元でけたたましく叫び声を上げて、意識を夢の世界から無理矢理引っ張ってこようとしている。
「うぅ……ん……」
沙綾は目を瞑ったまま枕元の音の発生源に手を伸ばす。すぐに指先にスマートフォンの感触を見つけて、手探りでサイドボタンを探し当てて押し込んだ。
それからまだ眠っていたい欲望にどうにか抗いながら、薄く目を開ける。
「……あれ」
そしてすぐに頭が覚醒した。身体を起こして、部屋の中をキョロキョロと見回す。
枕元には時計が三つ……ない。壁にはロックバンドのポスターが……ない。部屋の隅にアコースティックギターも……ない。見慣れているけれど、何だか懐かしく見える自分の部屋だ。
ということは……。
「戻った……んだ」
ぽそりと呟く。それすらも他人事に聞こえるくらい、あまりにもあっさりと沙綾は元の世界に帰って来ていた。
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