1: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/24(水) 23:26:35.23 ID:q0ukqms/0
貰ったプレゼントを試してみたいのだ、と美也が話しかけてきたのは、
お祝いムードも落ち着きを見せ始めたパーティの真っ最中であった。
柔らかく微笑む彼女の腕には、この日私が贈ったばかりの大きなクッションが抱えられて、
それは一見すると巨大なサンドイッチのような、誰がどう見てもサンドイッチのような、
むしろサンドイッチ以外の何物かに見えたのなら眼科へ行くことを勧めるレベルのサンドイッチが抱きしめられていた。
ちなみに具材はベーコンレタストマトである。
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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga sage]
2019/04/24(水) 23:29:02.31 ID:q0ukqms/0
「これは見てるとお腹が空いてしまいますな〜」
十七歳の誕生日パーティ、
3: ◆Xz5sQ/W/66[saga sage]
2019/04/24(水) 23:33:05.97 ID:q0ukqms/0
「プロデューサーさん」
美也がもう一度口にした。
4: ◆Xz5sQ/W/66[saga sage]
2019/04/24(水) 23:36:03.37 ID:q0ukqms/0
実際、クッションの角を指先でふにふにしながら紡がれる声は、
宴の喧騒の中でも聞き取りやすく。私は一々相槌を返しながら。
「確かに。美也は劇場でパーティをする時に毎回手伝ってくれるものな」
5: ◆Xz5sQ/W/66[saga sage]
2019/04/24(水) 23:39:33.56 ID:q0ukqms/0
「まぁ、それも仕事であるし……」
「なんと〜……お祝いはお仕事だったんですか?」
6: ◆Xz5sQ/W/66[saga sage]
2019/04/24(水) 23:42:28.46 ID:q0ukqms/0
結果、予想だにしなかった展開に慌てて申し開く為の言葉を探し。
「だが仕事と言っても人としての仕事、夢のハッピーライフを送るためには逃げてはならない道の事で。
決してプロデューサーであるとか何だとかの立場的責務から君たちをお祝いしてるワケじゃないぞ!」
7: ◆Xz5sQ/W/66[saga sage]
2019/04/24(水) 23:43:42.71 ID:q0ukqms/0
「……それで、そう、プロデューサーさん? 私、お願いがあったんです」
「お願い?」私の返事には瞬きがセットだった。視線を髪溜まりから彼女の顔へ。
8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:03:01.64 ID:HvshuUb/0
===
さて、こうして話は繋がった。
しかし彼女の"お願い"を聞かされた私はと言えば、たった一言「はぁ」と不明瞭な返事をした他は、
9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:06:00.00 ID:HvshuUb/0
もしや私の頭は他人より数段デキが悪く、そのせいで動機の理解が追い付かないのだ!
なんて事も一瞬ばかり考えたが、これでも人並みの生活を送っている以上、
こんな馬鹿げた想像は速やかにゴミ箱へ入れるべきであろう。
10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:07:42.69 ID:HvshuUb/0
「美也」
「はい」
11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:09:02.09 ID:HvshuUb/0
「プロデューサーさん?」
私は即座に立ち上がった。
12: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:10:05.02 ID:HvshuUb/0
だがしかし、まさにこれから行動を起こさんとする私と美也が扉の前に立った瞬間。
「ちょっとお兄ちゃん! 美也さんをドコに連れて行く気?」
13: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:11:44.78 ID:HvshuUb/0
「まぁ待て桃子、どうやら誤解があるじゃないか」
などと私が言い訳しつつ辺りを見れば、一体これはどうした事か?
この場は既に主役など居なくてもそれぞれが盛り上がる無法の地へと変わっていた。
14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:12:53.10 ID:HvshuUb/0
「これは酷い」
思わず本音がこぼれ落ちた。
私はこの場を収めることを諦めると桃子に視線を戻し言った。
15: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:14:37.60 ID:HvshuUb/0
そうして、美也が桃子の手を引く形で私達三人は廊下へ出た。
等間隔で並ぶ窓から見える外の景色は一面夜で塗りたくられ、
扉から漏れ聞こえる声以外には目立つ物音も存在しない。
16: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:15:52.07 ID:HvshuUb/0
「じゃあ、二人ともここで待って」
辿り着いた和室には外より濃い闇が詰まっていた。心なしか空気も重たいように思う。
17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:17:22.03 ID:HvshuUb/0
「で? この部屋で何するって?」
桃子は部屋の中央までやって来た所で深呼吸し、
18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:19:06.84 ID:HvshuUb/0
ましてそのような流れにならずともだ、
肩をすくめ、溜息をつかれ、呆れた調子で
「はぁ? わけわかんないんだけど。帰る!」
19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:20:52.60 ID:HvshuUb/0
「今から少し、横になろうと思ってます」
桃子の口がポカンと開いた。
20: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:22:05.56 ID:HvshuUb/0
次いでくるりくるりと頭の位置を直す。
ベストポジションを探しているのだろう。
21: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:23:20.24 ID:HvshuUb/0
===
「それで、これからどうすればいい?」
美也が寝返りを打ってこちらを向いた。
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