【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 17:50:58.21 ID:khuu0cd90
右足。左足。右足。
三歩あるいて、彼女もまた立ち止まる。私は慙愧の念を告げると同時に、既に歩けなくなっていた。
自分の髪と肩が濡れていく。雨は変わらず冷たいまま。そういえば、傘は彼女が持っていたのだったと、私は他人事のように考えていた。
以下略
AAS
14
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◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 17:52:00.45 ID:khuu0cd90
私も、止まれなくなっていた。自らの信じる、救いのような何かに、我武者羅に突き進もうとしている。
そのために、私と彼女の間にある唯一の交信を。言葉を、紡ごうとする。
「マスク……外す動作が綺麗でした」
以下略
AAS
15
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◆/rHuADhITI
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2019/04/07(日) 17:53:13.19 ID:khuu0cd90
「口元を隠しているのは、不意に表情を覗かれるのを恐れているからです」
取り繕う時間を求めているのだ。自分を見抜かれるのが怖くて、いつだって周囲を見つめ返している。
私は逆だった。でも、知っていた。周囲から隔絶されるための壁を作りたくて、いつも音楽で耳を塞いでいたから。
以下略
AAS
16
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◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 17:54:26.43 ID:khuu0cd90
それなら。
だったら。
私と、同じだというのなら……!
以下略
AAS
17
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◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 17:55:26.67 ID:khuu0cd90
傘が宙を舞った。はらりはらりと雨の中を泳いで、私の足元に落下した。
落ちた頃には既に、彼女は走り去っていた。足音すら聞こえなくなって、耳に響くのは途切れることのない雨音だけ。後悔の念が、じわりと心に染み込んでくる。
……私は、そもそも何をしたかったのだろう。彼女の心を暴き立てて、それでどうするつもりだったのだろう。
以下略
AAS
18
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◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 17:56:43.54 ID:khuu0cd90
どのくらい、たったのだろう。
「……灯織か?」
見知った黒い傘と白いコートが、雨の向こう側から現れた。
以下略
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19
:
◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 17:57:44.67 ID:khuu0cd90
「……あの、プロデューサー」
「なんだ?」
私は道すがら、ふってわいた疑問をぶつけることにした。自らを『ふゆ』と呼ぶ彼女のことを、何かもっと知りたくなって。プロデューサーなら、答えを示してくれる気がしたのだ。
以下略
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20
:
◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 17:58:34.98 ID:khuu0cd90
「……プロデューサーは、『本当』を見ていたいんですね」
「そうかもな。ああ、きっとそうだ」
『実像』に対する『虚像』。『本当』を見ていたいというプロデューサーの言葉は、暗に『虚像』の存在を肯定しているようだった。
以下略
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21
:
◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 18:00:17.47 ID:khuu0cd90
首をひねってから、プロデューサーは努めて柔らかな口調で言った。
「それは……どうだろうな。仕事がうまくいってる時の自分は好きだし、行き詰っているときの自分は嫌いだ」
「ふふっ、結局のところ仕事ですか」
以下略
AAS
22
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◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 18:01:31.34 ID:khuu0cd90
「わっぷ……!」
ぶつかった。いつの間にか、プロデューサーが立ち止まっていた。
「虹だ」
以下略
AAS
23
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◆/rHuADhITI
[saga]
2019/04/07(日) 18:02:23.95 ID:khuu0cd90
「そういえば、仕事で思い出したんだけどさ」
プロデューサーが話を戻した。私は短く「はい」と相槌を打つ。
「今度、新ユニットを立ち上げることになったんだ」
以下略
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