【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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22: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 18:01:31.34 ID:khuu0cd90
「わっぷ……!」

 ぶつかった。いつの間にか、プロデューサーが立ち止まっていた。

「虹だ」

 下り坂から見える、少し広くなった空を指差した。輪郭がはっきりとしない虹が浮かんでいる。さっきまでに比べて小雨になっているが、まだ雨は降り続いていた。雨上がりの虹はよく見られるものだが、雨中の虹というのは珍しい。

 プロデューサーが足をとめたのにも頷ける。立ち消えそうに輝く虹が、儚く、淡く、幻想的だった。

「虹も虚像らしいな」

 なんと気なしに、プロデューサーがつぶやく。

「でも、綺麗ですよ」

 私が言う。プロデューサーは「間違いない」と言って、また歩き出した。

 そうだ。私はこの日、綺麗な虚像に出会ったのだ。暴き出す言葉を止められなかったのも、もっと知りたくなったのも、私がその虚像に惹かれていたから。虚像を生み出す光に、どうしようもなく魅了されたから。

 そして、あの透き通るブラウンの瞳から、私は目を離せなくなったのだ。
 
 だったら本当は、『本当の自分』なんてどこにも存在しないのかもしれない。それはナンセンスな言葉で、でもしかし、確かに愛を注ぐことのできる虚像なのだ。

 人を構成するすべてが虚像で実像。そんな身もふたもないことを、私は勝手に考えている。



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