【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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23: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 18:02:23.95 ID:khuu0cd90
「そういえば、仕事で思い出したんだけどさ」

 プロデューサーが話を戻した。私は短く「はい」と相槌を打つ。

「今度、新ユニットを立ち上げることになったんだ」

「初耳です。もうメンバーも決まっているんですか?」

「いや、それはまだだ。というかプロジェクトが始動しただけで、細かいところはまだ何も決まってないんだよ」

「……あ。なら、最近プロデューサーの外回りが増えてるのは」

「スカウトだな」

 その四文字のカタカナが、私には踊って見えた。横目でもう一度虹を見る。

「良い子が見つかるといいんだがな。こればっかりは運だから」

 ぼやきが水溜まりに溶ける。私はプロデューサーとは反対に、期待に胸を膨らませていた。

「……プロデューサーが、見つけてあげてください」

「え……灯織?」

「きっと待っていますから。誰かが、見つけてくれるのを」

 私は空から視線を外して、明日になるまではもう見上げないことを決めた。そうして駆け出して、プロデューサーの横に並ぶ。

 プロデューサーは気合を入れ直していた。「そうだよな。それくらいの心積もりでいないとな」と、何度となく頷いている。

「普段は行かないところにも、足をのばしてみようか」

 最後にプロデューサーはそう口にして、パタリと傘を閉じた。私もそれにならう。話し込んでいるうちに、気がつけば事務所に到着していた。

 雨は止まない。明日の朝まで降り続く予報だ。だけど、不意にふわりと、暖かな風が吹き抜ける。

 それは予感。新しい季節の到来を、私はたなびく髪に感じていた。



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