【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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15: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:53:13.19 ID:khuu0cd90
「口元を隠しているのは、不意に表情を覗かれるのを恐れているからです」

 取り繕う時間を求めているのだ。自分を見抜かれるのが怖くて、いつだって周囲を見つめ返している。

 私は逆だった。でも、知っていた。周囲から隔絶されるための壁を作りたくて、いつも音楽で耳を塞いでいたから。

「愛嬌をふりまくのは、素の自分が無力だと思っているからです」

 誰かの目を反らしていたいのだ。どう見られているのかを検分し、意図的に好かれる自己を作り出そうとしている。

 私は逆だった。でも、知っていた。どうせ自分など誰の目にも留まらないと、いつしか不愛想を決め込んでいたから。

「笑顔がぎこちないのは……それが、偽物だからです」

 本物の笑顔なんて作れない。それを理解して、偽物の笑顔を張り付けている。

 私は逆だった。でも、知っていた。その手に入らないものを、アイドルになることで無理やり手に入れようとしていたから。

「……自分のこと、お嫌いなんですよね」

 彼女は自己を擬態させて閉じ込めた。私は他者への期待を捨てて夢だけに救いを求めた。

 私と彼女では手段が違っただけ。根底にある感情は同じもの。

 それは、自分の価値を何ひとつ信じることのできない、空虚なる感情の氾濫だ。



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