【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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16: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:54:26.43 ID:khuu0cd90
 それなら。

 だったら。

 私と、同じだというのなら……!

「あなたも……! あなただって……っ!」

 金切り声をあげる。しかし、それが私の限界だった。私は、未熟だった。

 つたなく差し伸べたその手を、彼女は鼻で笑って……切り捨てた。

「はっ……」

 低く、重い音だった。

 彼女は傘の傾きをなおして、私を睨む。その瞳は怒りと憎悪で燃え上がっていた。恐怖はない。その激情が向けられているのが、私ではないと知っていたから。だから、ただ哀しい。

「なによ。なによ、黙ってれば好き放題言ってくれちゃって……!」

 乱暴な言葉遣い。肩にかかっていた髪が落ちて、活動的な、あるいは暴力的な雰囲気を醸し出す。

 物腰柔らかな振る舞いは、もう微塵もない。これが彼女の本質なのだろう。彼女自身が嫌う、『本当の彼女』が立っている。

「マスクは表情を隠すため? はぁ、何よそれ? ……ざっけんな! 初対面のあんたなんかに何がわかるって言うのよっ!!」

 叫ぶ。髪を振り乱して、水滴を舞わせて、冷えた体を震わせて、彼女は叫ぶ。

 私は何も言えない。その激情を救い上げるすべを持たなかったから。つまるところ、私は失敗していた。

「何が偽物の笑顔よ……! 何が、自分が嫌いなんですね、よ……! そんなの……! そんなの、ねぇ……っ!」

 声が上擦る。嗚咽していた。そうだ。ずっと、彼女は泣いていたのだ。

 私には何もできない。何もできずに、せめて最後の言葉だけでも受け止めようと立ち尽くしている。

 彼女は逃れるように目をつぶった。行き場を失った左拳を、殴りつけるように下へと向ける。肩をいからせる。

 そして、彼女はまた、叫ぶ。

「……そんなの、ふゆが一番よくわかっているわよ!!」



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