【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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19: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:57:44.67 ID:khuu0cd90
「……あの、プロデューサー」

「なんだ?」

 私は道すがら、ふってわいた疑問をぶつけることにした。自らを『ふゆ』と呼ぶ彼女のことを、何かもっと知りたくなって。プロデューサーなら、答えを示してくれる気がしたのだ。

「プロデューサー。私の名前、読んでみてください」

「……? 『灯織』」

「そう……ですよね。プロデューサーは下の名前を、呼び捨てにしますよね」

「ああ。最初からそうだったろ」

「はい。でも……それは、なぜですか?」

 プロデューサーは私たちのことを、苗字でもあだ名でも呼ばない。『さん』づけもしない。アイドルなら誰に対しても名前呼びで統一している。

 さきほど改めて名前を呼ばれて初めて、私はそこに、こだわりのような何かを読み取っていた。

「うーん、そうだなぁ……」

 しばらくの沈黙。一分ほど歩いて、再び坂道に差し掛かったところで、プロデューサーは口を開いた。

「……たぶん、ずっと心のどこかに決めていたことなんだ。芸名とか、ファンからのニックネームとか、アイドルだからそういうのもあるけど。それでも俺は絶対に、下の名前で呼ぼうって」

 プロデューサーの声は決して大きくはない。だけど、雨のなかでもよく通っていた。

「呼び方って結局は、その人のどこを見ているか、なんだと思う。だから俺は本名で呼びたいんだよ。等身大の彼女たちを見ていられるように。どれだけ大きな存在になっても、一人のかけがえのない女の子だってことを、決して忘れないように」

 そういってプロデューサーは、「取らぬ狸の皮算用かな」と自嘲気味に笑う。そんなことは、ない。



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