29:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:25:16.23 ID:JbQZeQhn0
6畳1Kの部屋は、玄関から奥の腰窓に至るまで、相変わらず怠惰で埋め尽くされていた。
台所はカップ麺の捨て場となり果てており、タオルや服は畳まれないまま乱雑に放られている。
残された隙間の至る所には、雑誌やティッシュ、その他の見るに堪えないゴミが散乱していた。
30:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:27:40.08 ID:JbQZeQhn0
「――俺に、どうしろっていうんだ」
ジイサンは後ろを振り返り、僕を睨んだ。
「当局には内緒にしといてやるよ」
31:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:30:11.06 ID:JbQZeQhn0
「――!? なっ!?」
電気を消した直後、その男は驚きのあまり声を上げた。
彼が驚いたのは、ジイサンが目の前に急に現れたからだけではないだろう。
32:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:31:33.96 ID:JbQZeQhn0
「親だぁ?」
男は激昂した。
「俺の何を知ってんだ。余計なお世話だ、マジ警察呼ぶぞお前」
「ハッハッハッハ」
33:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:37:35.55 ID:JbQZeQhn0
――えっ?
「あぁ、そうしろ」
今にも飛びかかりそうだった男の剣幕が、ようやく少しトーンダウンした。
34:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:42:28.23 ID:JbQZeQhn0
男は冷蔵庫から缶ビールを一本取り出し、プルタブを開けて一息に飲んだ。
「親父の親父、つまり俺のジジイだな――そいつも、似たようなもんだったらしい。
結婚もしないまま、子供ができた途端に逃げたから、親父は母子家庭だった。
未亡人が子供を作ったと知った周囲の人間から、婆ちゃんと親父は相当に叩かれたんだってよ」
35:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:44:12.90 ID:JbQZeQhn0
「あぁ?」
男は缶を握り潰し、ジイサンに投げつけた。
「お前に俺の気持ちが分かってたまるか。さっさと帰れカス」
36:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:46:28.40 ID:JbQZeQhn0
「俺がアイツに説教するとでも思ったか?」
どうやら、僕のルートはすこぶる効率が良かったらしい。
今年は随分と仕事が早く終わり、まだ新年を迎えるまでには時間があった。
37:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:48:26.84 ID:JbQZeQhn0
「ただ、アイツの言ったとおりだ。
俺の身勝手のせいで、辛い思いをさせちまったのかも知れんのだから、説教する筋合いなんて無い。
まっ、謝ってやる気もサラサラ無いがな」
38:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:51:41.50 ID:JbQZeQhn0
「何で、って……代わりにやるからだろ? 年越しの手続きを」
「質問が悪かった。じゃあ、何で代わりが必要なんだ?」
「それは……」
「昔は、自分でできたのさ。
39:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:54:36.61 ID:JbQZeQhn0
――今の時代に留まりたいと願うだけで、本当に年越しができなくなるものなのか。
にわかには信じられないが、実際こういう仕事に携わっているのだから、疑う余地は無い。
だが、いま一つ腑に落ちない。
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