26:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:17:21.53 ID:JbQZeQhn0
この仕事を続けていく限り、僕達は世界の誰とも繋がらない。
誰かにとっての特別にもなることは無い。
いたかどうか分からない時代遅れの変人として、誰の記憶にも残らず、ずっと。
それがたまらなく嫌で、一度、仕事終わりに、どこかの公園のブランコに落書きをしてみた事があった。
27:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:19:31.74 ID:JbQZeQhn0
ジイサンは、事も無げに鼻で笑った。
「そういう役回りを俺は選んだ」
車の乗り降りを繰り返しながら、順調に案件を消化していく。
それは当然に、次第に目的地へ近づいていくことを意味していた。
28:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:21:31.06 ID:JbQZeQhn0
ギシギシと悲鳴を上げて軋む階段を二人で上がり、玄関ドアの前で立ち止まった。
「ジイサンが行ってきてくれ」
「あん?」
29:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:25:16.23 ID:JbQZeQhn0
6畳1Kの部屋は、玄関から奥の腰窓に至るまで、相変わらず怠惰で埋め尽くされていた。
台所はカップ麺の捨て場となり果てており、タオルや服は畳まれないまま乱雑に放られている。
残された隙間の至る所には、雑誌やティッシュ、その他の見るに堪えないゴミが散乱していた。
30:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:27:40.08 ID:JbQZeQhn0
「――俺に、どうしろっていうんだ」
ジイサンは後ろを振り返り、僕を睨んだ。
「当局には内緒にしといてやるよ」
31:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:30:11.06 ID:JbQZeQhn0
「――!? なっ!?」
電気を消した直後、その男は驚きのあまり声を上げた。
彼が驚いたのは、ジイサンが目の前に急に現れたからだけではないだろう。
32:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:31:33.96 ID:JbQZeQhn0
「親だぁ?」
男は激昂した。
「俺の何を知ってんだ。余計なお世話だ、マジ警察呼ぶぞお前」
「ハッハッハッハ」
33:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:37:35.55 ID:JbQZeQhn0
――えっ?
「あぁ、そうしろ」
今にも飛びかかりそうだった男の剣幕が、ようやく少しトーンダウンした。
34:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:42:28.23 ID:JbQZeQhn0
男は冷蔵庫から缶ビールを一本取り出し、プルタブを開けて一息に飲んだ。
「親父の親父、つまり俺のジジイだな――そいつも、似たようなもんだったらしい。
結婚もしないまま、子供ができた途端に逃げたから、親父は母子家庭だった。
未亡人が子供を作ったと知った周囲の人間から、婆ちゃんと親父は相当に叩かれたんだってよ」
35:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:44:12.90 ID:JbQZeQhn0
「あぁ?」
男は缶を握り潰し、ジイサンに投げつけた。
「お前に俺の気持ちが分かってたまるか。さっさと帰れカス」
49Res/44.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20