1: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2018/11/03(土) 16:18:30.41 ID:1iL2fWn50
モバマスSSです
地の文・少しの独自解釈あります
口調等おかしいかもしれませんが、見逃してください
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:26:09.54 ID:1iL2fWn50
初めてハイヒールを履いた日のことは、鮮明に覚えている。
爪先のほんの少しの窮屈さと、ふわふわとした頼りなさ。
それ以上に激しい高揚が、全身を貫いたのだった。
3: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:33:39.97 ID:1iL2fWn50
――――
――
この業界に足を踏み入れて二ヶ月が経つ。
4: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:37:17.59 ID:1iL2fWn50
会社の敷地内に建てられている寮の屋上から、往来のほうへ視線を放る。
ふ、と息をつき、私は目を細めた。
5: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:38:14.07 ID:1iL2fWn50
時子「盗み見なんて、躾がなってないわ」
ちひろ「候補生の子の管理は、事務員の業務の一つですから」
6: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:39:28.20 ID:1iL2fWn50
――さすが財前家のご令嬢。なんでもこなされますね。
――お見事です、時子さんに敵う相手なんて、他のどこにも……
7: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:40:54.95 ID:1iL2fWn50
時子「相変わらず派手な制服ね……そんな目に痛い服、いったいどこに売ってるのかしら」
ちひろ「ふふ、よく言われます。でも案外、着心地は良いんですよ?」
8: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:42:40.11 ID:1iL2fWn50
時子「それで? 鍵を閉めるんじゃなかったの?」
私は扉を指さしながら、彼女を一瞥する。
9: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:44:22.84 ID:1iL2fWn50
ちひろ「面白い話……時子ちゃ……時子さんがスカウトされたときなんて、面白かったですよ」
時子「……」
10: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2018/11/03(土) 16:49:42.95 ID:1iL2fWn50
――――――
――――
――
11: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2018/11/03(土) 16:51:48.64 ID:1iL2fWn50
黄緑の事務服を着た女性。その傍らには、普通のスーツを着た二十代半ばの男性だ。
時子「……世の中にはとんだ変態もいるものね」
12: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2018/11/03(土) 16:55:02.98 ID:1iL2fWn50
私は黙って振り返る。さっきの、黄緑女の横にいた男性だ。
下を見遣ると、なるほど確かに私のハンカチが落ちていた。いつもなら取り巻きが我先にと拾いにかかるのだが、当然その男性はそんなことをしないだろう。
13: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2018/11/03(土) 16:57:38.73 ID:1iL2fWn50
同じようにただ黙って彼を睨めつけていると、彼は何を思ったか、ほんの少し頭を垂れ、捧げるようにハンカチを私の前へ差し出した。
一瞬呆気にとられ、変な感覚が全身を走った。私はなるべくその様子を見せず、冷たく言い放つ。
14: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 16:59:58.22 ID:1iL2fWn50
時子「靴?」
私はもう一度視線を落とし、自分の靴を見た。
15: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 17:05:29.12 ID:1iL2fWn50
ちひろ「断っていただいても、全然かまわないので!」
時子「……ふん、別にかまわないけれど。先に一つ貴方に言っておいてあげる」
16: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 19:18:54.60 ID:1iL2fWn50
時子「アイドルなんて遊びよ。金のために働くなんて馬鹿みたい。所詮、この世のすべては生きてる間の暇つぶしに過ぎないんだから」
スカウトされた直後、彼と彼女の目の前で放ったこの言葉は、彼らにとってとても鮮烈だったらしい。
17: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2018/11/03(土) 19:21:04.75 ID:1iL2fWn50
ちひろ「本物、ですか?」
あのとき彼は、私の靴を見て私に見合っている、と言った。
18: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2018/11/03(土) 19:22:28.25 ID:1iL2fWn50
――さすがに、虚を衝かれた。
時子「……どんな?」
19: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 19:23:22.86 ID:1iL2fWn50
ちひろ「まぁ、まだ仮ですけどね」
ちひろ「もしかして、怖いですか?」
20: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 19:25:08.75 ID:1iL2fWn50
反射的に威圧的な態度をとってしまった私に対して、彼女は臆することなく笑みを浮かべたまま、
ちひろ「それは、自信なんですか?」
21: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 19:25:51.12 ID:1iL2fWn50
――寮にしてはやけに広い廊下。凝った装飾。
ここにいるのが夢を売るアイドルだとわかりきっているからこその、金の使い方だろう。
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