白菊ほたる『災いの子』
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91:名無しNIPPER[sage]
2018/05/27(日) 00:00:10.21 ID:xYuDFfGk0
乙です
いいね、匂わせるね、志希だけに


92: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:32:17.97 ID:Y+SAhLWq0
   08.

 小学6年生の運動会のとき、私は女子長距離走のクラス代表に選ばれた。
 特別運動に秀でていたわけでもない私が、なぜ代表に選ばれたのかはわからない。もしかしたら、みんながやりたがらない種目を押し付けられただけなのかもしれない。

以下略 AAS



93: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:33:20.64 ID:Y+SAhLWq0
   *

 駅の階段を駆け昇り、地上に出る。空は灰色に曇っていて、季節のわりに少し気温が低かった。
 携帯電話を取り出して時間を確認する。約束の時間を10分ほど過ぎていた。
 きょろきょろと辺りを見回すと、少し離れたところで、女性が手を振っていた。
以下略 AAS



94: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:34:25.10 ID:Y+SAhLWq0
 夕美さんの傘は、透明だけど外側のほうにピンク色のラインが入って、その少し内側に色とりどりのお花の模様が踊るように散りばめられていた。丈夫さ以外の観点で傘を選んだことのない私には、こういうものがどこで売っているのかもわからなかった。

「かわいらしいですね」

「ほたるちゃんは、傘は?」
以下略 AAS



95: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:35:17.93 ID:Y+SAhLWq0
 待ち合わせ場所を指定したのは夕美さんで、目的地は聞いていない。私は夕美さんの隣を半歩ほど遅れて歩いていた。そこに、細い路地からぴょこんと真っ黒い猫が飛び出してきた。
 よりによってこの日にかと、ため息をつきたくなった。

「あ、ほたるちゃん、猫!」

以下略 AAS



96: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:36:28.82 ID:Y+SAhLWq0
 ばいばい、と猫に手を振って再び歩き出し、夕美さんが足を止めた場所はオープンテラスのカフェだった。
 建物の中と屋外、それぞれにだいたい半分ずつ席が設けられている。

「よかった、空いてるね」

以下略 AAS



97: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:38:12.57 ID:Y+SAhLWq0
「えっと、なにかお話があったとかでは?」

「ううん、私はただ、ほたるちゃんとお茶したかっただけだよ。このお店ね、ひとりではよく来てるけど、いっしょに来たのはほたるちゃんが初めてなんだ」

 少し意外に感じた。夕美さんは交友関係が広く、ひとりでいるところを見た記憶がほとんどない。事務所のアイドルにはカフェ巡りを趣味にしてる人もいるし、お気に入りのお店なら真っ先に紹介してそうなものだけど……
以下略 AAS



98: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:39:23.50 ID:Y+SAhLWq0
 カップを口元に近づけると、ぽわんと不思議な香りがした。
 カモミール、お花の見た目はわかるけど、匂いがこんな感じだったかというと、ちょっと自信がない。だけど、嫌いじゃない。
 そっとひとくちすすってみる。味はほとんどない。ふつうの紅茶や緑茶と比べるとお湯みたいなものだった。そのぶん、お茶類特有の渋みもなくて香りの邪魔をしない。きっとそういう楽しみかたをする飲み物なのだろう。

「どうかな?」
以下略 AAS



99: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:40:47.67 ID:Y+SAhLWq0
「……楽しかったことを思い出せばいいんでしょうか」

「思い出すんじゃなくて、そのとき楽しむ、かな?」

「よく……わかりません」
以下略 AAS



100: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:41:34.93 ID:Y+SAhLWq0
「でしょ」

 夕美さんが嬉しそうに言う。

「今、ほたるちゃん笑ってたよ」
以下略 AAS



101: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:42:15.02 ID:Y+SAhLWq0
 お店を出て歩いているとき、夕美さんがぴたりと足を止めた。
 どうしたんだろう、と私も立ち止まると、すぐ近くでパシンと軽い音が鳴った。
 私の顔のすぐ前に夕美さんの手があって、野球のボールが握られていた。
 夕美さんの視線は近くの高いフェンスに向いていた。どうやらそこは学校らしい、金網のフェンスの向こうから高校生ぐらいの男子が走ってきた。左手にグローブをつけている、野球部員のようだ。
 夕美さんは彼に向けて手を振り、空めがけてボールを投げた。高く上がったボールはフェンスを乗り越えて、彼が構えたグローブに入った。
以下略 AAS



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