63: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:43:01.19 ID:XzeV2oVA0
「あ、そうそう。それでひとつ確認したいことあったんだー。ほたるちゃん、ちょっとじっとしててね」
言うが早いか、志希さんは私のレッスン着のファスナーを一気に下まで引き下ろした。
「な、なにをするんですか!?」
64: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:44:46.26 ID:XzeV2oVA0
ああ、とようやく納得がいく。
私のプロデューサーさんがいつも傷だらけなのは、今やけっこう有名な話だ。私の不幸を知っているのなら、当然それも知っているはずだ。
プロデューサーさんの負傷の原因が私の不幸なら、私も同じようにケガをしているんじゃないか、ということだろう。
でも、それならそうと、先に言ってくれればいいのに。
65: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:46:46.39 ID:XzeV2oVA0
*
レッスン開始時刻になり、トレーナーさんが入ってきて、雑談は終了となった。
この合同レッスンの担当になったトレーナーさんは、青木聖さんだ。
66: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:48:36.90 ID:XzeV2oVA0
どういう意味だろう? と思ったけど、ちょうど音楽が流れ始めたので、私は見学に集中することにした。
志希さんはどうやら歌にアレンジを加えているようだった。ところどころ音程やリズムをわざと崩していたり、間奏部分でスキャットを入れたり、歌詞も一部変えたりしている。それでいて楽曲としての質は損なわれていない。
さすがに歌もダンスもレベルが高く、私は思わず感嘆の息をついた。志希さんは軽々とこなしているけど、あれは相当に難しいだろう。
67: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:51:01.88 ID:XzeV2oVA0
「では次、相葉」と聖さんが言う。
「はいっ」と元気よく答えて夕美さんが立ち上がる。入れ替わりに志希さんが腰を下ろし、そのままこてんと横になった。
夕美さんが、さっきまで志希さんが踊っていたところでトーントーンと飛び跳ねる。リズムを取っているようにも見えたし、体をほぐしているようにも見えた。
68: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:52:34.82 ID:XzeV2oVA0
「相葉はそれまで」
聖さんが言う。
「次、白菊」
69: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:54:09.32 ID:XzeV2oVA0
「久しぶりだな」
聖さんがニヤリと笑う。
私が聖さんのレッスンを受けるのは、346プロにきて最初のレッスン以来だった。
後になってから知ったけど、そもそも聖さんは通常は新人のレッスンなんて受け持つことはない。あのときは、プロデューサーさんの依頼で特別に、ということだったらしい。それ以降は、聖さんの妹の慶さんや明さんが私のレッスンを担当していた。
70: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:55:06.23 ID:XzeV2oVA0
「いじめっこだ」
と志希さんが笑う。
「上手だったよ」
71: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:56:35.39 ID:XzeV2oVA0
「下駄を履くわけではないから、そこまで極端に難しくはならないと思うが、和装の経験は?」
「えっと、お仕事では少しだけ。歌ではなくて、演劇ですが……」
「ほう」
72: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:58:20.56 ID:XzeV2oVA0
*
志希さんと夕美さんはお仕事の予定が多く入っているため、合同レッスンがとれる日はあまり多くない。
2回目の集まりは最初の合同レッスンから3日後のことで、この日は集合時間になっても、志希さんが姿を現さなかった。
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