71: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/23(水) 17:56:35.39 ID:XzeV2oVA0
「下駄を履くわけではないから、そこまで極端に難しくはならないと思うが、和装の経験は?」
「えっと、お仕事では少しだけ。歌ではなくて、演劇ですが……」
「ほう」
幽霊の役を、とまでは口にしない。聞いたほうも反応に困るだろう。
「今日のところはそこは気にしなくていい。次回、感覚をつかむためになにか借りてこよう」
「わかりました」
「それはそうと、白菊」
聖さんが、手元のバインダーに目を落とす。
「ここ最近、体重が減っているようだな」
「あ、はい。そうみたいです。えへへ」
「なにを嬉しそうにしている、増やせ」
「ええっ?」
「これはもはや不健康といっていい領域に入っている。お前まだ13歳だろう、成長期に体重落とすヤツがあるか」
「いえ、でも私べつに、ダイエットとかしてるわけじゃ……」
「レッスンのしすぎだな。レッスン量を減らすか、食事量を増やすかしろ」
レッスンは減らしたくないなあ、と思った。
「えっと、じゃあ……がんばって食べます……」
「そうしろ。では、白菊がもう少し休憩したら、全体曲のレッスンを始める」
「あ、私はすぐでも、だいじょうぶですけど」
聖さんがいぶかしげな視線を向けてくる。
「お話してるあいだに、息整いましたので」
「……ああ、そういうヤツだったなお前は」
私はきょとんとした。
そういうやつって、どういうやつだろう?
「心配しなくても、お前も遠からず、あっち側になるよ」
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