196:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:05:28.54 ID:LS54PsoZ0
一番のサビが終わると、観客から大きな声援が上がりました。
それに応えるように、さらに眩しい笑顔を見せながら、彼女のパフォーマンスはますます洗練されていきます。
197:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:08:49.63 ID:LS54PsoZ0
「ウソ……」
見間違いだと信じたい。
実際、この位置からでは、彼女の靴紐なんてほんの点のようにしか見えません。
198:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:11:26.22 ID:LS54PsoZ0
「! あ、危ないっ!!」
紐が切れたっ!
切れ――!
199:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:15:19.17 ID:LS54PsoZ0
「ゴムを……」
「大したものだよ。つくづく不幸との付き合い方を、あの子は心得ているのだな」
腕を組み直し、感心した様子で事務員さんは、鼻でため息をつきました。
200:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:18:22.04 ID:LS54PsoZ0
「私は……」
こんなものだ、と――いつからかずっと、何かを追い求める気持ちを、抱かないようにしていました。
反発を恐れたからです。ですが、駄々をこねて親から怒られた訳ではありません。
201:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:24:33.86 ID:LS54PsoZ0
――簡単に諦めきれるものじゃないはずです、夢って。
――〜〜〜ッ〜〜〜〜!!♪
202:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:27:53.58 ID:LS54PsoZ0
だけど――!
「私は……私には……!」
203:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:31:07.06 ID:LS54PsoZ0
「……ッ!」
「あの子はキミに言っていたはずだ。
このステージを一番観てほしい人、その素晴らしさを伝えたい相手が、誰なのかを」
204:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:37:33.21 ID:LS54PsoZ0
「う、わあぁぁぁぁ……!!」
うめき声を上げながら、雨でグシャグシャの頭を、胸をかきむしりました。
205:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:40:07.87 ID:LS54PsoZ0
眩しい光が示したのは、どこまでも醜い自分でした。
夢への羨望と、後悔と、どす黒い嫉妬にまみれた、本当の自分。
206:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 02:43:32.97 ID:LS54PsoZ0
立ち上がり、もう一度ステージを見ます。
大歓声に向けて手を振るほたるちゃんを。
「このまま、終わりたくありません……私も飛びたいです」
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