44: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:08:55.93 ID:X17K8DuQ0
終業のチャイムが鳴った後の学校は、静かに靴音を響かせる。
通り過ぎる教室から聞こえるお喋りはやけにゆっくりと頭の中を通り過ぎた。
僕は聞こえるはずもないのに、その中から女の子の名前を必死に探していた。
45: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:09:58.15 ID:X17K8DuQ0
片方の女の子がおずおずと答える。
「今日も……お休みですよ」
46: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:11:50.72 ID:X17K8DuQ0
女の子が気まずそうに話を始める。
夕暮れの教室に3人の会話だけがそっと聞こえる。
47: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:13:47.01 ID:X17K8DuQ0
女の子たちに礼を言って、僕は音楽室に戻る。
廊下を歩いていきながら、起こったことをひとつずつ整理していく。
48: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:14:38.33 ID:X17K8DuQ0
心臓の音が早って煩くなる。それを認めるには勇気がいるような気がする。
あの日をこんなにも後悔するワケが、心の見えなかった部分にある。
49: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:15:49.94 ID:X17K8DuQ0
◇
50: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:17:03.98 ID:X17K8DuQ0
だから、扉がそっと開いた音はやけにはっきりと聞こえた。
この部屋に用事がある人はたったひとりだけだ。
51: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:18:22.60 ID:X17K8DuQ0
「あのあとね、お母さんやお父さんにも大反対されちゃって、ケンカしちゃって」
「やっぱりアタシの夢は誰にも応援してもらえなかった」
52: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:18:56.21 ID:X17K8DuQ0
分かち合えない心は、互いに伝えるべき言葉を渡せないまま、すれ違い始めた。
もうなりふり構っていられなくなって、自分のエゴが咄嗟に悲鳴をあげる。
53: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:19:46.13 ID:X17K8DuQ0
「……アタシは、絶対にアイドルになりたいの」
もう一度、想いを確かめるかのように忍は呟く。
54: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:21:03.31 ID:X17K8DuQ0
僕の身体はもう動かなかった。思考もほとんど止まっていた。
忍の身体がもう一度僕の横をすり抜けていこうとする。
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