46: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:11:50.72 ID:X17K8DuQ0
女の子が気まずそうに話を始める。
夕暮れの教室に3人の会話だけがそっと聞こえる。
「その……」
「忍とケンカしちゃって……」
そのタイミングの一致は僕には偶然と思えなかった。
もしかしてこの娘たちのケンカも、僕と同じ理由なんだろうか。
「進路調査?」
ふたりの女の子がほぼ同時に頷く。
その顔にはなぜ知っているのかという驚きも含まれていた。
「忍がアイドルになりたいって急に言いだしたからさ」
「忍にアイドルなんて無理だよって、つい言っちゃって」
「次の日から休んじゃったから、謝ろうにも謝れなくてね」
やっぱり。そりゃそうだよなという気持ちもあった。
それくらい忍の告白は衝撃的で、咄嗟に応援するなんてできそうにもなかった。
何にもないこの街でそんなことを言い出す人がいるとも、きっと誰ひとり思っていなかった。
あの日、忍は夢を語った全員に否定されたような気持ちになったってことだ。
少しだけ救われた気持ちになったのは、忍の夢が笑われたわけじゃないということだった。
心配そうに、申し訳なさそうにその日のことを教えてくれるふたりの女の子。
その仕草は、表情は、大切な友達を想う姿だった。
言葉だけがうまく伝え合えなかったのだろう。
そばにいればいるほど、背中を押す方だって怖いんだと。
中途半端な気持ちで応援できるほど、一緒にいた時間は短くないんだと。
僕は彼女たちからそう教えてもらった気がした。
僕もきっと半分は同じだと思った。
でも忍は姿を見せないままだ。そして僕はまだ残り半分の理由を探している。
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