工藤忍「おかしなうさぎは夢見て跳ねる」
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49: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:15:49.94 ID:X17K8DuQ0





 春休みに入って、お日様は暖かさを少し分けてくれるようになった。
 それは誰もが望んだ春を、優しい気持ちを運んでくるはずのもので。
 でも、きっと誰にとってもそうじゃないんだって今なら分かる。

 僕はまだ何日も忍を待ち続けている。
 会いにいくことも、謝ることもできないまま。

 音楽室に来る度に、誰かいないかと期待してしまう。
 擦れるシューズの音と大きな歌声が聞こえてほしいと願ってしまう。


 音楽室の同盟は、こんなにもあいまいなものだったんだと今更気付く。
 家に押しかければ良いのかもしれないけど、連絡先を聞けば良かったのかもしれないけど。
 それでも、きっと仲直りをするならこの部屋じゃないとダメなんだと思う。


 それくらい一緒の時間を、音楽室で過ごしてきた。


 置き去りのままのシューズを視線が何度も捉える。
 練習なんて手につかなくて、今日も手持ち無沙汰にピックを揺らす。

 僕の手は何度も空振りして、静かな鈍い音だけを響かせた。


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