44: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:08:55.93 ID:X17K8DuQ0
終業のチャイムが鳴った後の学校は、静かに靴音を響かせる。
通り過ぎる教室から聞こえるお喋りはやけにゆっくりと頭の中を通り過ぎた。
僕は聞こえるはずもないのに、その中から女の子の名前を必死に探していた。
どこに行けばいい。体育館か、大教室か、忍のクラスか。
何もかもを知っていたつもりで、何も知らなかったことに気付く。
誰が好きで、嫌いで、仲良しで、そういったフツウのことが分からない。
どうかなんでもいいから、きっかけを掴めますように。
そう願う度にいつの間にか足は早って、息が上がり始めていた。
ここが忍のクラスだ。祈るような気持ちで目を開ける。
息を切らして飛び込んだ教室の窓際に、女の子をふたり見つけた。
「あのっ!」
怪訝そうにこちらを伺うふたつの顔がだぶって見える。
確かに、必死の形相で教室に入ってくる奴がまともな奴のわけがない。
扉のレールをまたぐ前に、勢いだけで来た自分に気付いて、深呼吸をひとつした。
とりあえず突っ走るなんて、まるでどこかの誰かさんのようだった。
「……な、なんですか?」
「工藤さん……忍、どこか知りませんかっ?」
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