工藤忍「おかしなうさぎは夢見て跳ねる」
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52: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:18:56.21 ID:X17K8DuQ0


 分かち合えない心は、互いに伝えるべき言葉を渡せないまま、すれ違い始めた。
 もうなりふり構っていられなくなって、自分のエゴが咄嗟に悲鳴をあげる。

「それだってこっちでできることあるだろ!」

 どうか行かないでくれ。そう伝えたいだけなのに、口から出る言葉は空回りする。

「ないんだよっ!! アタシみたいなフツウの子には……」

 忍の声も大きくなる。諦めたりしないと、想いの丈をぶつけてくる。
 その叫びは努力に頼るしかなかった女の子の悲痛な本音だった。

「書類なんかじゃ絶対無理。直接オーディション受けて、アタシの努力を認めてもらうしかない」

 顔が良いわけでも、なにかトクベツな才能があるわけでもない。
 それでもテレビの向こうで歌うアイドルを、遠い国のお姫様のように憧れ焦がれる。

「それだって今じゃなくたっていいだろっ」

「進路が決まり始めたら、もうアイドルになるチャンスなんてない!」

 きっと来年度は進路に合わせてクラスも授業も変わるだろう。
 誰もが子どものころの夢を諦めて、大学に進むことを、就職することを選択していく。
 進路調査というたった1枚の紙切れは、女の子をこんな決断をさせるまで追い込んだんだ。


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