270:名無しNIPPER[saga]
2018/04/06(金) 11:45:55.48 ID:m2Fax+Wi0
病室に着いても、私の心は波立ったままだった。
「ねぇ、春香……」
271:名無しNIPPER[saga]
2018/04/06(金) 11:46:29.40 ID:m2Fax+Wi0
私の中は、空っぽになったものだと思っていた。
私の心は、あの事務所から離れたものだと思っていた。
272:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:13:45.46 ID:UnTjGLwD0
いつの間にか、面会時間の終わりが来た。
病院から出なければならない。
273:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:17:27.58 ID:UnTjGLwD0
「余計なお世話よ、ばーか」
水瀬さんの猛禽類のように鋭い眼光が、私を射抜く。
274:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:23:10.14 ID:UnTjGLwD0
「仕事なんて二番目なの、私達にとってはね」
「水瀬さんらしくない言葉ね。家族を見返してやるってあんなに言ってたのに」
275:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:31:38.57 ID:UnTjGLwD0
「別にアンタは答えなくていいわよ、わざわざ聞く気もないし」
こめかみに力が入り始めたところで、水瀬さんはあっけらかんと言い放った。
276:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:35:26.47 ID:UnTjGLwD0
「自分にとって大切なもののためだけに、アンタを心配する。ね? 私達、すっごい自己中でしょ」
「自分勝手な考えだし、良いわよ、私達の心配を面倒に、鬱陶しく思っても。そのせいで私達を嫌いになっても」
277:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:36:28.18 ID:UnTjGLwD0
「い、伊織ちゃん……ちょっと言い過ぎじゃないかしら……?」
「別にいいのよ、小鳥。ネジが何本か飛んじゃってるみたいだから、これくらいガツンと言ってやらないと」
278:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:42:18.99 ID:UnTjGLwD0
『もっと大切なもの』。
水瀬さんはそう言った。
279:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:43:13.05 ID:UnTjGLwD0
受付で忘れ物をしたことを話し、病室へ向かう。
角を曲がって春香の病室が見えた時、扉が開いていることに気付いた。
280:名無しNIPPER[saga]
2018/04/08(日) 03:44:50.05 ID:UnTjGLwD0
「ハンカチ、取りに来たんだろう。しっかり者でも忘れ物をするんだな」
「はい、ありがとうございます」
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