27: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:01:08.58 ID:6rZ5mY140
勇太「あ………….。あのさ……夕陽、赤いな。真っ赤だな。すごいな!あれだけの大空を真っ赤に染めるなんて。特殊能力なんて信じられないけどすごい力がはたらいている。あんな大空を一瞬で真っ赤に染めるなんてさ。綺麗だ。前にもさ、初めて抱き合う日に、こうやって屋上で夕陽眺めてたよなー。懐かしかったなぁ。あの時は愛し合う前だった。月日って流れるの早いよな」
六花「……」
勇太「…………」
反応なしか。目の前に火の立てを描こうとした希望が暗い灰になって燃え尽きる。
もっと惹きつけるのがほしい!
28: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:01:46.72 ID:6rZ5mY140
勇太「着いたな」
六花「……」
勇太「今日は色々あったよな」
六花「……」
29: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:02:38.69 ID:6rZ5mY140
六花……?
お前本当に大丈夫か!?って問いたくなるが、また同じ答えをされるだろう。黙るしかない。
とにかく久しぶりに声を聞けたのはうれしい。疎遠の崩壊にはならなさそうだ。
しばらく無言だった。静寂の夜が心地よかったのもあるが。だが無言だったのであまりにも苦痛だったゆえに「今日はデート遅刻してごめん」と真正面に謝ると、その表情で首を横に振られた。その不気味な光景から早く避けたい気持ちが渦巻く。
そして言うタイミングを失った。彼女が目の前にいるのにいつ喋りかけたらいいか、嫌われるのが確定事項だからなおさらだった。でも何もしないのも評価を落とす一方なのも分かってる。
30: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:03:20.00 ID:6rZ5mY140
……。理不尽だ。意味が分からない。この光景、理解不能な現象。
丹生谷「小鳥遊さん、待っているんだからね!」
その言葉が脳内に思い出される。正確にはそんな言葉は聞いていない。俺の中の丹生谷の話だ。誰かが今の俺のために叱りつけている。未来から飛んできたような変な感覚。
丹生谷……。こういうとき丹生谷だったらどういう対処しているかな。怒っているから相当なことで……。六花は本気なんだ。それ以外は不要だったんだ。最初からこじれた関係からの諦めリタイアを望んでいるのは、いじけた六花のほうじゃなくてそう思っている俺の方だった。六花は悪くない。現実逃避したのは俺だ。あいつは最初から訳があってあんなことをやっているんだ。やっぱり原因があるんじゃないか。それをないがしろに扱って俺というやつは。じゃあ、本気を行使しようか。おそらく一回目覚めたら世界は世紀末的に消滅するだろうな…..と意気込んで。
勇太「ごめん」
31: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:03:51.84 ID:6rZ5mY140
はぁ!はぁ!はぁ!!!急いで階段を2つ股飛びし最短ルートで自転車置き場まで直行する。陸上選手もびっくりだ!荒い息でめまいがしてきた。事故現場を見ると、案の定転げた自転車の山ができてるよハハッ……。その中に3台上がった自転車と六花がいたので話さずにはいられなかった。
勇太「大丈夫か!」
六花「平気。鍵は見つかった?」
泣き言……言わないんだな。
32: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:04:36.92 ID:6rZ5mY140
第4話 「バニッシュオブゼウス;デイオブゼウス」
(蝶になった夢を見た人は、蝶になった夢を見ていたか、今の自分が蝶であるか分からない)
世界は暗黒に染まる。あれだけカラフルだった物体は今、黒または白の色を輝かせる。
この地球に住む者たちの昼間からでは観測できない異様な変化が影の支配によって訪れる。
33: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:05:51.51 ID:6rZ5mY140
……。……。どれぐらい漕いだろう。ずっと。ずっと。しばらくチャリを漕いでいた。はぁ、はぁ、はぁ。疲れてきた。傾斜がミリ単位少し高くなったのか動きずらいや。小さい3階建てが多く目立つ。町の変化も薄くなっていき、景色が大胆で大金をかけたものじゃなくなった。
郊外に来たようだ。
小さい一軒家やマンションが大半を占めるようになり、全国チェーン店の看板も多くなり興奮がなくなってきた。
左右から見える田んぼも数量的に多く見られる。
オレンジ色の街灯も先ほどよりはなくなってきたようで路上を飾るのみ。町も電気も付かないしなんだか暗くなったな。
34: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:06:30.99 ID:6rZ5mY140
でも現実世界のみんなも、みんなみんな大好きだし、尊敬している。
甘えた声とは裏腹に厳しいけど相談にのってくれる丹生谷。
いつも寝てばっかだけど誰もが困ったときはいいアドバイスをしてくれるくみん先輩。
髪がいつも暴れるけど部活が楽しいと思えるし本音を純粋に訴えたかわいいだけじゃない凸守。
明るく笑っては時々我慢するけど人生の生きる意味の良さを初めてくれた俺の恩師の七宮。
35: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:07:10.18 ID:6rZ5mY140
太ももに重心がかかる!張り裂けそう!一歩ずつ踏むのが遅くなる!でもこれを超えたらその先は……!そう思うと。
踏まずにはいられない!
先程よりは遅くなったが、ハンドルを右左に大きくかじを取ってはその振動でタイヤを少しだけでも前に出す!1回、2回、3回!
目の前の景色がアスファルト斜面になったが、それも不安になるので上を見てそれを癒す。でも進んでいないという落差に絶望が入り込む。
地面と顔の距離が近くなりぶつかりそうだ。
36: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:07:56.91 ID:6rZ5mY140
あ、六花の携帯が!……でもわざわざここまで来たのに、話し合いもいっぱいやることあるのに道が分かりませんでした、なんて言えるわけがない!信頼崩壊だ。六花の失望する顔が見たくない!邪魔なプライド云々関係なく六花の泣き顔を想像したくない!嫌だ!
何かヒントがあるはずだ!左右の橋を大きく首を振って確かめる。あのころ……、確か石造りで、今いるここほど巨大ではなく、また橋の上に何かかっているわけでもない。地面が普通のアーチ傾斜だったな。降りるときの大きかった緑色の看板が目印。あと坂道が有利ってことか。
緑は暗すぎて分からない。橋を見る。あたりは暗いしちかちか光っている右の横1番目は絶対ないな。左4番目は長さが違う。左2番目はアーチの盛り上がりがないな。確か傾斜感じたはず。右最奥の4番目は橋の上に架かっている除外。あの右2番目の橋は。あ。ちょうど電車がガタンゴトン鳴らして橋を通過した……だからなしか。電車に乗っている安全な彼らがうらやましい。左1番目は、勘だがないだろう。以前と違う気がする。
となると、左3番目、右3番目が候補か……。結構遠いぞ。何かないか目印。何かさっきの電車みたいに助けが……こない。待っても状況は変わらない。望遠鏡があったら看板分かったかもしれないのに!
遠いぞ。しかも行って戻ってくるって、そんな体力は使い果たした。バイクだったら違ったのに。それに時間が……。確実にオーバーする。俺達の今後に支障をきたすのだけは絶対避けたい。ダイスは1回しか振れない。だが間違った全てが終わりだ。
37: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:09:05.17 ID:6rZ5mY140
勇太「六花。元気が湧いてきた。ありがとう」
六花「なにより」
勇太「しっかりつかまっててほしい」
六花「うん。 あの、ゆうた……」
勇太「ん?」
95Res/303.64 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20