37: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:09:05.17 ID:6rZ5mY140
勇太「六花。元気が湧いてきた。ありがとう」
六花「なにより」
勇太「しっかりつかまっててほしい」
六花「うん。 あの、ゆうた……」
勇太「ん?」
六花「大丈夫?」
勇太「……」
いや、ずっと立ち止まっているから、そりゃ心配されたんだろう。バレてないバレてない。これぐらいの汚点ならかわいいほうだけどさ。うん、信じたい。
ここまで大丈夫だよな……。いや時間が押しているんだ。早くしないと時間オーバーだ。
勇太「うん、大丈夫だ!俺を信じろ!」
怖いけど。
六花「理解した」
ハンドルバーをしっかり握って、ブレーキを確認して、周りの人のいないのも首を振って、
勇太「他に言うことない?」
六花「特に。私は平気」
そして目の前にタカのような目つきで睨み付け、真っ暗闇の中の空間のありどころを知る。
勇太「いくぞー!最後の全速力だーーー!!!」
ここまでの距離とならハエに等しいさ!
大急ぎで巨大な橋の終わりまで走った。
この風を纏った勢いをつけたまま左の道路にかじを取る。
前はひたすら真っすぐで、止まらなくてもいいボーナスゲームだ。
カシャカシャする音をタイヤが火花を放ちぶっ壊れるまでひたすら立てて、風圧に負けない速さで駆けていく。
はやいはやいはやい!風をもろともしない!風圧で吹き飛ばされそうだ!
まず1番目!これは序の口だ!世界の末を超える!
次に2番目!これも違ったな!
胃が苦しい!呼吸とめまいがする!腰のキュッと抱かれるのもまた!でも立ち止まったら死ぬ!
首を上下に振り回しながら勢いを何とかつけて、筋肉が痛い!
飽きたなんて言わせない!もうすぐ!足を除けば目の前にある!3番目が来る!
あるか?あるか!あるか!?
お願いだ!不可視境界線!助けてくれ!何でもするから!
神様!!助けてくれ!!
ダメだ疲れた。あと300mを前に体力切れが起こり足を動かせなくなった。
残るは走ったおまけのみだ。
これで最後が決まる。見たいけど、見たくない。
ここまでの思い出ありがとう。
見たことのない景色。昼間とは違う姿になる世界。それがよくもわるくもあった。
神様に限って、裏切ることはないと信じたい!今日の今だけは!命令を聞いてくれ!
速度のあからさまな低下に、サドルについた尻を痛めて、ゆっくりとゴールに着こうとしている。
少し思ったよりかかったけど、着いた。
はぁ…….はぁ…..。止まったらめまいがひどくなった気がする。気持ち悪い。
例の橋の、下に向かう境の横断歩道につき、自転車を停止した。
こっからなら左右にありそうな看板と、バックで戻ることも容易だと思う。
例の緑の看板は……?
どこにあるんだ。暗くて見えない。町の中を左右探してもない。町の左右を探してもない!
えっ……?
えっ?
うそだろ……?
町の左右を確認してもなかったが、
その横断歩道の横の草むらに白く大きい何かがそびえ立っている。
緑の看板だ。
その緑の広告に思わず体が軽くなった。笑顔になった。
胃の和らいだ安堵感が俺を包む。
実際に言うことはできないので、心の中で、
勇太「りっか!ありがとう!ありがとう!」
と強く祈った。神様にも一生恩をきると誓った。もう二度としませんと教訓を得た。
その思いが自転車をカシャカシャさせて、目的のあの場所まで風を走らせた。
そう、俺の憧れの場所へ。
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