36: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:07:56.91 ID:6rZ5mY140
あ、六花の携帯が!……でもわざわざここまで来たのに、話し合いもいっぱいやることあるのに道が分かりませんでした、なんて言えるわけがない!信頼崩壊だ。六花の失望する顔が見たくない!邪魔なプライド云々関係なく六花の泣き顔を想像したくない!嫌だ!
何かヒントがあるはずだ!左右の橋を大きく首を振って確かめる。あのころ……、確か石造りで、今いるここほど巨大ではなく、また橋の上に何かかっているわけでもない。地面が普通のアーチ傾斜だったな。降りるときの大きかった緑色の看板が目印。あと坂道が有利ってことか。
緑は暗すぎて分からない。橋を見る。あたりは暗いしちかちか光っている右の横1番目は絶対ないな。左4番目は長さが違う。左2番目はアーチの盛り上がりがないな。確か傾斜感じたはず。右最奥の4番目は橋の上に架かっている除外。あの右2番目の橋は。あ。ちょうど電車がガタンゴトン鳴らして橋を通過した……だからなしか。電車に乗っている安全な彼らがうらやましい。左1番目は、勘だがないだろう。以前と違う気がする。
となると、左3番目、右3番目が候補か……。結構遠いぞ。何かないか目印。何かさっきの電車みたいに助けが……こない。待っても状況は変わらない。望遠鏡があったら看板分かったかもしれないのに!
遠いぞ。しかも行って戻ってくるって、そんな体力は使い果たした。バイクだったら違ったのに。それに時間が……。確実にオーバーする。俺達の今後に支障をきたすのだけは絶対避けたい。ダイスは1回しか振れない。だが間違った全てが終わりだ。
分からない、分からない、どうしたらいいんだよ。どうしたら。
俺は自分の不甲斐無さに憤慨し自転車のハンドルバーに殴りつけた。
ここまで来てダメなのかよ。六花。嫌だ。負けを認めたくない。俺は強い子なんだ。男の子なんだ。ああ、ちゃんと調べてくればよかった……。突っ走るなんて六花が喜ぶからと思ってやらなきゃよかった……。理解してたらこんなことには。俺が万能な人間じゃないから。万能だったら今すぐ解決してはい終わりになった簡単なことなのに……!これじゃあもう六花に顔向けできないよ!
自転車に伏せてただ疲れたことをアピールして、顔に血の通わない真っ青で、つまらない汗を背に垂らしながら、ほんとは目が潤ってきた……。
大きくなる夜空の下に、小さい自分。
非情にも刻々と時間は過ぎていく。時間は愛を反らしていく。
でも間違ったら終わりだから。
嫌だ。こんな情けない自分なんて死んじゃえ!!万能じゃない自分なんて!!
六花……。六花…………!
六花「ねえ」
その時六花の声に気付いた。周りの音が死んだ。不意の出来事に、乾ききった目で、目を合わせる。
六花「不可視境界線映ってる」
うん……。
その橋の下の水面には月模様の光る不可視境界線が波に揺れながら映っていた。
勇太「綺麗だな」
六花「……」
六花は何も言わなかった。ただ見てほしいのか六花は声をかけたようだ。ただ二人でじっと綺麗な川を見ている。
不可視境界線……。六花の追い求める異次元への扉。この世界に入ると平行世界に行くことができ、しかもどんな願いも叶うという。果したかった六花の願いは亡くなったお父さんに会いたいというただ一心で、何日も行き海から出る不可視境界線を見ていたそうだ。所詮は中二病で、そんな奇跡あり得っこないのに自身に異常な魔力を込めると信じて眼帯を付けて、それでも会おうとした。お父さんは六花に優しくて、風邪でも休まない永遠に死なない、特殊なヒーローだったんだ。憧憬の気持ちが俺にも温かく伝わる。六花のお父さんはすごい人だ。邪王心眼の笑顔を管理できるなんてこんな俺にはできっこないよ。
ただ眺める月の揺れが心地よかった。
なあ、不可視境界線よ。よく聞いてくれ。お前はそこに行けば何でも叶えてくれるのか。例えば凸守と行けばカレーを出してくれるってのも本当か?ないよな……。無謀だ。現実では無理だと知っている。必ず失敗するってわかっている。所詮俺たちがちまちましなきゃ軽々しく奇跡なんて起こせはしない。そうだな……不可能だ。ただの高校生だったら確実に不可能だな。だが今日は月が強い。覚醒の時だ。生憎この世のシステムをよく知っているあの邪王心眼がいる。世界を一瞬で書き換える力を放ち、そして不可視境界線の管理局からも追われることになった堕天使がお前の目の前に映っている。その瞳がお前の光の先にある幾多の平行世界と共鳴し、もし一瞬の奇跡を失敗した平行世界線からシフトできる強烈な力があったとしたら…..。万が一俺の気力の果てたあげく違った世界になれば六花と婚約解除することになる。今日だけは、今日だけは事情が違うんだ。六花が悲しむことになる。誰だっていい。信じたいんだお前を。いつも昼間の空から見ていたじゃないか。少しぐらい分けてもいいだろ。運命が壊れたってかまわない。今からの運は後で払う。勝手でごめん、そういう契約を交わしたい。闇の炎の使い手であるダークフレイムマスターの命令だ。神様。頼む。六花といい結果に行かせてくれ!力を月にぐっと強く手を伸ばして共鳴させる。
月の出る方向は……
左。
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