六花「勇太をなんとしてでも独占したい!」
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32: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:04:36.92 ID:6rZ5mY140
第4話 「バニッシュオブゼウス;デイオブゼウス」
(蝶になった夢を見た人は、蝶になった夢を見ていたか、今の自分が蝶であるか分からない)

世界は暗黒に染まる。あれだけカラフルだった物体は今、黒または白の色を輝かせる。
この地球に住む者たちの昼間からでは観測できない異様な変化が影の支配によって訪れる。
あくまで仮の姿だった。世界は一つの姿だけが正解じゃない。
姿形も漆黒に染まり、この世界の本性が牙を抜く。
静まり返るこの町は今、終焉を迎えようとしている。

現実世界がもう一つの姿を見せる。

誰もが理解していたはずなのに、その空間にはまだ知られていない仕組みの謎が残されている。二人の乗った一台の自転車が漆黒の闇を斬り裂き運命のレールを開拓する。変わりゆく絶対を相対に変えた深淵の闇そして風を受けて体の血の盛り上がりようを体で感じている。自転車の走行で生じた風の反発は神の行くなとの警告であるとも体感できる。町の者は皆闇に飲み込まれて消えてしまった。あれだけ活気づいた人たちも街並みも通行人も同じ道路なのにそれを恐れてかいない。大空を舞う雲の形すら感知できなくなった。
そして人々は希望を求め光を町中に照らした。
ダイヤモンドの明るい点が漆黒に対抗するかのように点在して輝く。一軒家やマンションや電柱から一点を起点にして宝石が生まれる。
その光の司る様子は、住宅街のカーテンの閉まる影と2人の影を目にして、その中のカレーの匂いが鼻腔を刺激し、声も漏れている。巨大な建物のそびえたつ中に挟まれた今に、暗闇の中電気の付かない家は闇に殺されてしまったようだ。鳥の声も一切聞こえなくなった。夜中の静かに佇むにこやかな政治や治安ポスターが異様に怖い。足元を照らしドブに落ちることへの警鐘と保証をくれる自転車のライトが頼りだ。少年の群れやリーマンの帰りを風のぶれで横切り、誰かと衝突しそうな狭い住宅街の道路を抜けている。視界の悪い狭い道路の十字付近で足を落とし、いないと判断すると急に加速を始める。曲がりくねった狭くて長い一本道も自転車では一瞬だ。回転するタイヤに石の蹴とばした音が聞こえる。その音は闇に消えた。遠くから電車の音も聞こえ迷ったときの指標になる。横から見える巨大な小学校らしき建造物も真っ暗で死んでいる。土地の工事現場にブルドーザーが寂しく取り残されている。壁が壁だと分からない真っ暗な建造物を超え、行き止まりと壁を繰り返して巨大な光の行方を追う。空を見上げると飛行機の光がバチッと赤白く点滅し空の先へ進んでいる。俺の知らない道、でも何かあるか分からないドキドキする道。柵で囲まれた壁の間の狭い出口を出ると、巨大な建物およびその影を支配する点々としたオレンジ色の光達が並んでいた。
大道路だ。
冷たい風の、大きな暗黒の空に染まった中で。ヘッドライトの光をつけた車が多く行き交う。オレンジ色の道路に沿って立ち並ぶ街灯も宝石のような高級感を感じる。ネオン式の看板がカラフルなべたな色で展開する。足が止まった。未開領域に踏み入れた俺は茫然とした。ただ広い。ガタンガタンと昼間とは段違いの音を出しながら電車が走行し後に踏切が上がる。細長いバッグを持った部活帰りや黒い指定服姿の会社帰りと思われる人たちやお洒落なお姉さんが歩いてくる。大通りにしか見えないビルの屋上からの空港障害灯も赤く照らしているのが見える。ビルも町もコンビニも、皆昼間とは違った輝き方をしている。
道は長い。その道先の見えない暗黒が黒く不安を焚きたてる。その闇の先に行くとまたこの場所にループで戻ってくるかもしれない。
だが全速力で行く。今から行けば9時には十分間に合う。
この町ともお別れだな。
都市部にしかあらず近いけど手で掴めないそのビル群をゆっくり眺める。
俺はブレーキをしっかり持って、六花の後姿を確認して、そしてペダルを踏んだ。
勇太「よーし!じゃあいっちょ派手にやるか!」
六花「きゃあああははっ!」

ひかりこうしんきょく。
急げ!風のように!
ペダルを思いっきり何十回も回してその勢いはマッハ2を超える!
風がすごい!闇のコートがバタバタはためく!頭の前髪が風に押されて立っている!
この歩道は俺達のものだ!新幹線が通過するぞ!!
六花のぎゅっと抱く腕も強く絡まり、その嬉しい信頼感が足を増させた!
驚かれた顔もいざ知らず、右ブロックの学生たちを避け、左ブロックのリーマン達を避け、女性の道にちょっと横に避けていく!遠方の先にある踏切の手前まで高速ジェットでひとっとびだった!踏切の線路の上でふわっと浮かびジャンプ!俺たちは宙に浮いている!内心ヒヤヒヤしたがこの特殊な風に流れてるっていう感触のドキドキが楽しい!地に落ちた衝撃を俺と六花の尻で痛く吸引する!するとまた颯爽に走り信号機の青から赤に変わり横信号が黄色なのを確信し、ハイスピードを忘れない光速に近い高速でかき回してゴールイン!!その後の立て続けた信号機も止まることを止めて連続ゴールイン!ビュンビュンいう風で周りの自動車音が聞こえない!速すぎて誰もが止まったかのような不思議な印象を感じ俺ってこんな力があるんだとにこやかになった!六花の方も見るとにこやかに返された!すごく嬉しい!うおおおおおおお!!!さっきまであった建物が1秒後には別の建物に変わっていて見ることに全然飽きない!対向車線からパトカーがやってきたが、早すぎて見つからないレベルで風の塊を俺の周りにつくる!六花も嬉しそうでパトカーに手を振っている!ははっ!俺たちは特別なんだ!国家政府なんぞに捕まらないぜ!世界は俺を後にする!各々の車すら追いつくか追い越すほどに快感が楽しい!町の活気も薄くなり静かで暗い建物が怖いけどそれを気合いでかき消したい!でもこの瞬間青春しているだなって思って超嬉しい!嬉しい!嬉しい……!
勇太「りっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
俺は深淵の夜空に咆哮した!夜空に響き渡る!
六花「ゆうたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
六花も続いて俺の後を追った!やっぱり共鳴者なんだな!
俺をぎゅっと挟んでいる手に、いつまでも愛したいって思うよ!
今だけだと分かってる!
でもこのまま最後まで突っ走りたいよ!!
ずっとずっと何よりも速く!
こんな幸せ、受け取っていいのかな……。
暗い世界の中でただ一つの光が、まるでE=MC^2を描くように普通を超えた速度で走った!!


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